■あれ? 魚がいないのか…… 代わりに“ヘビケラ”ならぬ、ヘビトンボが登場!
さて、予定の区間を釣り終えたので、かねてより気になっていた上流部をそのまま釣り上がってみました。2段の滝の側面を高巻きした先、両岸の崖は高さを増し、さらに深い谷間となっています。川床は岩盤が剥き出しのところが多く、どうも魚たちが居つきにくそうな流れです。
案の定、ところどころにある深みにもイワナもヤマメもいません。そして思い出したのです。かなり前に来たことがあったことを……。そのときも当然何も釣れませんでした。ちょうど左岸から入っている支沢を辿って車道へと出ました。ときおり登山でもやらかすのですが「行ったことない」つもりで、実はあったというパターンです。数多く山と渓谷を歩いているせい。そういうことにしておきます。
車に戻ってひと休み。まだ時間があるので、今度は下流部へ行ってみました。ここは正真正銘入渓したことのない場所。地形図と照らし合わせながら、本当に細い沢状の地形(水線なし)から、ほんのわずかに水が染み出している斜面を下ってみました。
抜け殻を引きずったままのヘビトンボの成虫。飛翔する姿は“ヘビケラ”みたいです
見た目は雰囲気満点。ゴルジュや地図にない比較的新しい堰堤まで登場しますが、一向に魚の反応はありません。ふと大きな岩の側面に目をやると、大きな虫が蠢いていて一瞬ギョッとします。正体はヘビトンボでした。体長50mm以上ある大型の水生昆虫です。羽化したてのようで、抜け殻を引きずっていました。
腹部には大きな翅が付いていますが胸部が長く、どこかバランスが悪い感じ。本当に飛べるのか疑ってしまうような風貌です。虫好きの筆者ですが、幼虫も不気味で見るたびにいつも嫌悪感をいだいてしまいます。しかし、比較的レアな存在ですので、しばし観察しつつ撮影をしました。「それにしても『ナウシカ』に登場する“ヘビケラ”みたいだな」。
入ったポイントには他に釣り人の気配はありませんでした。この雰囲気満点のポイントの連続で魚がいない(反応がない)なんて……。
そもそも午前中に釣果に恵まれた場所は、初めてこの渓を訪れたときに気になって偶然入渓した区間です。たまたまなのかは分かりませんが、渓相の割に全体的に魚が少ないのかもしれません。そのおかげで釣り人もそれほど多く来ないのか。とにかく最初にそこに目を付けた、当時の自分を褒めてあげたい。その僥倖に感謝しつつ渓を後にしました。また数年後訪れてみたいと思います。はたして覚えているのでしょうか……。