アウトドア好きな人であれば、キャンプ料理やバーベキューで木炭を使う機会が多いだろう。筆者の場合、いつも安い海外産マングローブ木炭ばかり使っていたが、ホームセンターでたまたま見かけた「岩手切炭(いわてきりずみ)」が気になった。マングローブ木炭と比べて岩手切炭は高価である。これらは値段の分だけ明確な性能の違いがあるのだろうか?  今回は実際に使用して、忖度なしで比較検証してみた。

■高品質な「岩手切炭」 岩手県の木炭は全国1位!  シェアは2割ほど

 林野庁による令和6年の調査結果では、岩手県の木炭生産量は全国1位。国内生産量全体の2割強のシェアがある、とある。

 購入した岩手切炭には「GI登録商品」の表示があるが、これは国の「地理的表示(GI)保護制度」という、風土や伝統製法によって育まれた高品質な地域産品を保護する制度によるものだ。厳格な審査をクリアした、いわば国のお墨付きの品質の証であり、岩手の木炭は全国で唯一GI登録が認められた炭である。

 岩手切炭の原木は楢や樫で、職人による丁寧な手作業でつくられており、「切炭」の名の通り、扱いやすいよう一定の長さで切り揃えられている。

■一方筆者愛用のマングローブ木炭は?

 マングローブは樹木の名称ではなく、熱帯などの海水と淡水が混ざる場所に生える植物の総称だ。マングローブ林だけに生える固有の樹木に限ると、世界に約73種類が存在するという。

 マングローブ木炭はマレーシアやインドネシアなど東南アジア産が多いが、その原木には複数の種類が混じっている。そのため木炭の品質にバラつきがある。

■【超絶ガチ検証!】実際に性能を比較してみた!

左がいつもの安いマングローブ木炭、右が高級な岩手切炭

 では実際に木炭を同じ条件で着火し、燃焼時間や食材調理による味の違いなど、性能を比較してみる。

 岩手切炭はコンパクトで小さく、固い印象である。ほぼ同じサイズに切り揃えられ、美しく整っている。

 一方マングローブ木炭は長く、太さもバラバラだ。

 着火はほったらかしOKな煙突型火起こし器を使用する。着火剤は新聞紙と拾った松ぼっくりだ。

●火付き、煙、匂い、爆跳、火力

 着火材の燃焼がおさまり、熾火(おきび)の状態になると調理に向く安定した火力になる。まずこの状態になるまでの時間を計測した。

・マングローブ木炭:29分
・岩手切炭:40分

 まず両者は火のまわり方が違う。

 マングローブ木炭は可燃ガスが大量に発生するのか、火柱が高く上がり、時おり爆跳(ばくちょう)つまり炭が割れてはじけ飛ぶことがあり、火の粉の飛散もあった。

派手さはなく、静かに燃える岩手切炭。嫌な匂いは一切しない

 岩手切炭は静かに燃え進み、爆跳なし、火の粉も舞い上がらない。安定するまで時間を要するが、一度着火すると火力が強い印象である。

 またサイズが揃っているため、火起こし器に入れやすくおさまりがよかった。

 どちらも火が安定すると煙はほぼ無くなったが、マングローブ木炭には鼻にツンとくる独特の匂いがあり、岩手切炭にはそれがない。

●直火焼きで食べ比べ:肉と魚を焼いてみた

 今回調理する食材は、鶏もも肉と塩鮭だ。鶏もも肉の味付けはシンプルな塩コショウのみ。「遠火の強火」の直火焼きで、途中数回ひっくり返しながらじっくり焼き上げるスタイルだ。 

 焼き上がりの見た目にはあまり違いがないようだが、果たして。

マングローブ木炭で焼いた、左が鶏もも肉、右が塩鮭

・マングローブ木炭:焼き上がりまでの所要時間 38分

 食べたときの最初の正直な感想は「固いな」だった。鶏肉は汁気が失われてパサついている。鮭は見た目はよいが、箸で身を崩すのが困難なほど乾燥しており、こちらもだいぶ水分が飛んでいるようだ。

岩手切炭で焼いた、上が鶏もも肉、下が塩鮭。見た目は変わらないが味に大きな差が出た

・岩手切炭:焼き上がりまでの所要時間 44分

 鶏肉には驚くほど明確な違いが出た。肉はあきらかにふっくらジューシー。鶏皮はこんがり、カリカリに焼き上がっており、かぶりつくと肉汁が滴る。 

 鮭は皮が香ばしくパリッとして歯切れもよく、マングローブ木炭で焼いたものと比べて身もふっくらしている。

 この差は何によるものだろうか。

 感触としては、岩手切炭は強い熱で表面を一気に焼き締めて、水分を内側に閉じ込め、その後じっくり蒸し焼きにしているのかもしれない。

 マングローブ木炭はじわじわと加熱していくが、その間に食材の水分や脂が染み出して炭に落ち、ジュージューと騒がしかった。

 両者の違いに関する根拠を見つけることはできなかったが、一般的に安価で売られている海外産の木炭は不純物と未炭化の部分が多いため、燃焼時間も短く、遠赤外線の量も少なくなるようである。