■ようやく獲れた! 会心の尺イワナ

 一度渡渉してからずっと右岸沿いを釣り上がっていたのですが、標高差がある流れでは同じ岸際にしかフライを投げていません。なぜなら中心部の流れがあまりに速く、例え対岸の左岸側でうまく魚が出たとしても、手前に寄せるのに流心の激しい流れに引き込まれてネットまで導くことができないからです。

 対岸の良さそうなポイントを眺めながら進んでいると、右岸、つまり自分側に流れが緩衝してトロリとしたポイントを見つけました。その上には枝が覆い被さっていて少々キャスティングに難がありますが、雰囲気は抜群です。

シャープな印象のイワナ。ヒレの先までピンと張った姿に美しさを感じます

 なかなか狙った箇所にフライが入らず数投して、なんとかいい具合に漂うフライ……。次の瞬間、激しい水飛沫とともにフライが消えました。慌ててラインを引きながらロッドを上げて合わせます。力強く抗いながら流心へ。白泡の合間から一瞬見えた顔は黒く精悍で、なんとしても取りたいところ。水流が強く引き寄せることができず、ロッドを掲げながら落ち込みをいくつも一緒に下ります。流れが弱いところへどうにか導いてネットインです。

 ちょうど尺サイズのイワナが怒ったような顔をしてこちらを睨んでいました。流線型の均整のとれたプロポーション、発達した尾ビレに美しさと凄みを感じます。

 その後もときおり水面が割れイワナが飛び出してきます。時間が経つほど反応が良くなるようでした。4時間ほど釣り上がってから退渓して、林道を歩いて入渓ポイントへと戻ってきました。入渓ポイントはフライを流さずにとっておいたのですが、まだ時間に余裕があったので少しだけやってみることに。複雑な流れを読み解きながら、じっくりとフライを流していると、ヤマメかと思わせるような鋭いアタリとともに釣れたのはなかなかの良型イワナでした。水温も(体感的に)すっかり上がっていて活性が上がっていたようです。

厚みのある筋肉質な魚体のイワナ。同じ渓の魚でもそれぞれに個性を感じます

 徐々にドライ(フライ)での釣りが楽しい季節に入ってきています。数ある釣りのなかでもフライフィッシングならではのスリリングな水面の釣り。あっという間に過ぎていく季節を目一杯感じるべく、次の釣行に思いを馳せています。