■滝上はパラダイス! 良型が好反応

遡行を続けていると何度か堰堤や滝が行く手を塞ぎ、そのたびに高巻きして越えていくのですが、上に上がるほどに魚影が濃く、型も良くなっていきました。水温は10℃ちょうどになっており、出方も素直そのものでまさに高活性です。
10年前、いや20年くらい前の渓流釣りはこんなだったと思うほど、おもしろいように魚たちが反応してくれます。基本的にはドライフライを結んでいたので、小さい魚が浮上してきたときは先にフライを引き上げて掛けないようにするほどでした。

しかし大物はそう簡単に釣れてくれません。対岸の反転流にうっすらと見える魚影にはまったく相手にされず、ようやく出てきてくれた別の良型は、すっと浮上してフライを見切ってUターン。それはそれで妙な喜びを感じてしまうのは筆者だけでしょうか……。
■羨ましすぎる尺一寸! 白川郷の白い美形イワナ

先行していた同行のルアーマンが手招きしています。そっと近づくと深みのある反転流がとろりと流れ、水面上や水中にも枝が入っており、いかにも大物が潜んでいそうです。
一撃で決めないとフライやラインが枝に引っ掛かりそうです。緊張して見守っていると、ライズとともに黒く精悍な顔が流れから覗きました。迷っていられません。ワンテンポおいて弓矢を引くようにボゥ&アロー、フライを落として2秒後に水面が割れました。やや高さのある位置からだったので取り込みには苦労しましたが、どうにかネットイン。思っていたよりサイズは小さかったですが、狙い通りに釣れた一匹は満ち足りた気持ちにさせてくれました。

写真を撮っていると同行者が何か叫んでいます。慌てて駆けつけると掲げたネットに収まりきらずに尾ビレが出ています! なんと尺一寸、白く太い立派なイワナの美しい姿がありました。破顔する同行者にその釣果を讃えながらも、羨ましさがじわじわと込み上げてきます。実は彼女は当日の前半でも尺上の見事なイワナを釣り上げていました。釣りはいろんな意味で修行かもしれません。
雪国の季節も春から初夏へと移り変わろうとしています。いよいよ本格的な渓流釣りシーズンの幕開けですね。