■盛大に上がる水飛沫!  山女たちのパーティーが開宴

太陽が隠れた後、色づく川面。これくらいから虫たちの量が増え、ライズが始まります

 やがて徐々に始まったライズは、昼間の心配をよそに一気に盛り上がりました。夕闇迫るプールは、まるで山女たちのパーティー状態です。

 気がつけば、虫たちもその密度を増しており、種類も数多。ただすでに辺りは薄暗く、判別しづらいです。とにかく、時間と共に虫たちの種類は目まぐるしく変わっていきます。交尾しながら飛翔しているもの、産卵をしながらホバリングしているもの、風に流されるように小さな群れで移動しているもの。奇妙な異物が流下しているのに気づき目を凝らすと、カワゲラがポツリポツリと水面を漂っていました。

 その間にもポイントの至るところで魚たちが水面を割り、何度も見た光景なのに圧倒されてしまいます。ときに派手な水飛沫と共に激しい音が流れに響きます。なかには気前よく全身をあらわにして水面を横っ飛びしていく山女も。優に30cmを超える、ゴージャスな銀ピカボディです。虫たちの種類の多さとライズフォームが違いすぎて、相変わらず経験不足の筆者は焦りながら次から次へとフライを変えて流すことしかできませんでした。

 西の空の残照がすっかり消える頃、ライズも収まりました。辺りは闇に覆われ、離れた車道を走る車のライトがときおり川面に反射します。前回(数日前)釣れたフライは、今宵はもう通じません。涎が出そうなほど悩ましい山女の姿を脳裏に焼き付けるだけでしたが、負け惜しみではなく幸せな気持ちで車へと戻りました。

■モーニングコーヒーの前、ワンチャンあるかも!

翌朝、太陽が昇るまでが勝負!

 東の空がうっすら明るみ出した頃、山あいにたなびく雲が薄紅色に染まり、ぼんやりとした山々の境界線が徐々にはっきりとしてきます。のんびりと川を眺めながらコーヒーを飲みたいところですが、早起きの山女が寝ぼけまなこ状態(勝手なイメージです)のうちに勝負したいところです。

野生味ある山女が泳ぐ川。いつでも釣れる訳ではありませんが、釣果以外の魅力を感じる場所です

 朝4時半の水温は12.3℃でした。どこか語呂がいい数字の並びに励まされるように釣りを始めます。虫たちも少し飛んでいましたが、それより水面を流下する虫に注目していると、申し訳程度、まさに寝起きを感じさせるような控えめなライズを見逃しません。水面に張り付くような羽を広げた状態を模したフライをそっと流すと、スローモーションのように水面下に魚の横顔が見えました。しっかりとフライを咥えた山女、ワンチャンありました。

 今年は昨年に続き山々の積雪が少なかったせいで、すでに川の水量が減っています。このままでは簡単に水温が上がり、問題になっている外来種の藻の繁殖にも繋がってしまいそう。災害にならない程度、山と川に潤いをもたらしてくれる雨が継続して降り続けてくれることに期待するばかりです。