■保存は冷蔵庫で!

要冷蔵のアンチョビ缶。身の色はまるで生のイワシのようだ

 日本で売られている高級アンチョビ缶はスペイン産のものが多く、なかには内容量50g程度で2,000円近くするものがある。そのレベルになると、もとの値段が高いのはもちろんだけど、輸入には冷蔵コンテナを使い、到着後も売れるまでずっと冷蔵保管される。発送時にも冷蔵トラックを使うという徹底ぶりだから、その間の冷蔵費が馬鹿にならないのだ。

 そもそもアンチョビは生なので、常温のままだと少しずつ中身が劣化していく。風味が落ちて色が黒ずんでいき、賞味期間を過ぎればやがて身はバラバラに溶けてしまう。それでも腐らないのは、塩漬け&油漬け&密封にして、菌類や微生物類を繁殖しにくくしているから。だから、通常のアンチョビは常温の売り場に並んでいるわけだ。

 しかし、冷蔵すれば劣化が遅くなるのは間違いない。たとえ安価なアンチョビでも、買ってきたら必ず冷蔵庫で保存してほしい。とくに最近の夏の暑さはアンチョビにとって大敵ですぞ!

■野菜がいくらでも食べられる

野菜はちょっと焦げたくらいがおいしい

 さて、我が家にも賞味期限を過ぎたアンチョビ缶があった。冷蔵保存していたけど、開けてみたら身がすでに褐色に変化していたのだ。

 こいつをアウトドアに持ち出し、ニンニクと一緒に刻んでオリーブ油で加熱して、レッドペッパーも加えて、シンプルに焼いた春野菜にぶっかけてみた。菜花のわずかな苦みに、新ジャガのみずみずしさ。葉のすみずみまでジューシーなブロッコリー。それら春の贈り物に塩辛くオイリーなアンチョビソースがよく合って、いくらでも野菜が食べられそう。まさにアンチョビさまさまな、お手軽料理であります。

 このように余計な調味料なしでも、食材のポテンシャルを引き出しておいしく仕上げてくれるのがアンチョビ缶の素晴らしさ。お宅の冷蔵庫に余っている野菜はありませんか?