5月の末、缶詰業界に衝撃が走った。「サヴァ缶」などのヒット商品を製造している岩手缶詰が、釜石工場の操業を一時休止すると発表したのだ。
操業を休止するのは、同社が県内に5つ持つ工場のうちのひとつ。つまり、すべての缶詰製造がストップするわけではないけれど、操業休止の主な理由は「サバの不漁」とのこと。今後、日本のサバ缶はどうなってしまうのだろうか?
■女性を中心に人気が広がったサヴァ缶
岩手缶詰は、業界では知らない人がいないほど有名な企業であります。というのも、他社のブランドの缶詰を製造する“OEM事業”を幅広く手掛けているからだ。例えば、国分グループ本社「缶つま」シリーズには、同社が請け負い製造する商品がいくつもある(以前紹介した「マテ茶鶏のオリーブオイル漬け」も、その一例)。
そして、忘れてはいけないのが「サヴァ缶」。2013年に発売されて以来、累計製造数が1,200万缶を超えたロングセラーのサバ缶であります。
フランス語の「Ça va?(サヴァ、お元気ですか?)」という挨拶に掛けた品名と、カラフルで愛らしいデザイン、そしてオリーブオイル漬けという製法が斬新で、女性を中心に人気が広がった。2018年のサバ缶ブームを作ったきっかけの缶詰でもある。
■新しい商品開発が必要

サヴァ缶の中にはオリーブオイルが約65ml入っている。大さじで換算するとだいたい4杯分になるので、冷水で洗ったパスタ(2人分)に絡め、塩コショウで味付けするだけで、サバの旨味が利いた冷製パスタが出来る。作ったことがある人も、きっといるだろう。
このサヴァ缶を製造していたのが、操業休止となった釜石工場なのである。今後はサヴァ缶が当分入手できないだろうと思い、ぼくも慌ててAmazonで買ったのだった。
岩手缶詰だけでなく、ほかの水産系の缶詰企業もサバの不漁による原料不足に直面している。それがもう数年間も続いているのだから、じつは大変な事態が進行中なのだ。今度はサバだけでなく、近年豊富に獲れるようになったイワシやブリなどの魚も活用して、新しい商品を開発していく必要があるだろう。