食べ物にはそれぞれ匂いがあるけど、缶詰には保存食ならではの匂いがある。食品業界で「レトルト臭」と呼んでいるもので、1つは加熱したサツマイモのような甘い匂い。もう1つは蒸れたような、こもったような匂いであります。
どちらも密封、加熱によって発生すると言われていて、缶詰だけでなくびん詰、レトルト食品でも感じられる。製法上、避けられないマイナス点ではあるのだけれど、じつは食べる前に「ある食材をちょい足しする」とかなり改善できるのだ。
ちょい足しのやり方は主に3通りあって、1つはより強い匂いで元の匂いを覆い隠す「マスキング」。2つ目は、匂いの元がアルカリ性なら酸性の食材を加える「中和」。そして、あえて同系統の匂いを足し、いい匂いを強調してマイナスの匂いを目立たなくする「同調」。最後の同調というのはぼくの造語だけど、これがやってみるとなかなか奥深く、とても面白い。
ちょい足しに使う食材は、ざっと分けると「油脂類」、「調味料」、「野菜その他」の3種類になる。それぞれ単独で使うこともあるし、組み合わせることでより効果を高めることもできる。今回は第1弾として、油脂類の使い方を紹介しよう。
■ちょい足しすることで調理したての風味に
油は食べ物の表面を覆うから、口に含んだらすぐにマスキング効果が分かる。なかでもゴマ油に唐辛子の辛味が溶け込んだラー油は、かなり優秀な油脂だ。その香ばしい匂いと辛味は、どんな缶詰であろうと、調理したてのような風味に変えてくれる。
例えばサバ缶などのみそ煮、しょう油煮にかけると、ゴマの香ばしさが魚臭さを抑え込んでくれる。タレ味のやきとり缶にかけても、同様の効果が得られる。
辛いのが苦手な人は、ラー油ではなくゴマ油を選べばよし。いずれにしろ、ゴマの香ばしい匂いが缶所(もとい勘所)であります。