つるっとした喉ごしで食べやすく、調理も簡単なのが「そうめん」のいいところ。

 麺を茹でたら流水で洗って、好みの味付けでいただくのが基本的な調理方法だけど、ここで質問。なぜ、そうめんは茹でた後に洗わないといけないのか? 

 「麺のぬめりを取るため」というのは正解のひとつだけど、じつはそれよりずっと深い理由があるのですぞ!

◼️食塩と植物油が必要なわけ

そうめんは日本各地で作られている。その発祥地は奈良県だ

 そうめんの歴史はとても古く、その発祥地は奈良県桜井市とされている。同地で作られている「三輪そうめん」が誕生したのは、今から1300年も前と言われている。

 三輪素麺工業協同組合によると、誕生当時のそうめんは、小麦粉を湧き水でこねて引き延ばしただけの素朴なものだったそうだ。それが室町時代に入ると、小麦粉に食塩を加えて水でこね、生地を作るようになった(食塩が加わると麺にコシが出る)。また、麺の表面には植物油を塗るようになった。

 そうめんは、生地をまず帯状に切り出し、それを成形しながら引き延ばして、次第に細くしていくのだが、その合間に何度か生地を休ませる時間がある(熟成工程)。その間に麺が乾燥するのを防いだり、麺同士がくっつかないようにするために植物油を塗る。この製法は今でも基本的に変わっていない。

■洗うことで塩分・油分が約10分の1に

そうめんの原材料表記の例

 製造時に食塩と植物油を使うのは、三輪そうめんだけでなく、播州そうめん(兵庫県)や小豆島そうめん(香川県)など、多くのそうめんで見られる。伝統的なそうめんのほとんどは、塩と植物油を使っていると言ってもいい。

 と、ここまで来れば「なぜそうめんは茹でた後に水で洗わないといけないのか?」という質問の答えが分かったと思う。麺に含まれている余分な塩分と油分を洗い落とし、小麦本来の風味を際立たせるのが理由なのだ。

 ちなみに、乾燥状態のそうめんに含まれている塩分と油分は、どのくらいの量なのか? 製法によって違いはあるけど、乾麺100gあたりで塩分が3.5〜5.7g程度、油分は1.5〜1.7g程度が含まれている。それを茹でて、さらに流水でしっかり洗うことで、塩分と油分はそれぞれ約10分の1まで減らせるそうだ。

◼️ごしごし洗ってぎゅっと絞る!

茹でたそうめんはごしごし洗う

 茹でたそうめんを洗う時には、流水を使いながら“ごしごし”ともみ洗いするべし。

 そうめんは柔らかい麺というイメージがあるけど、じつはコシがしっかりしている麺なので、両手でもみ洗いしても千切れることはない(わざと引きちぎってはいけませんよ)。

水切りもしっかり!

 洗い終わった後の水切りも、ザルを振るだけでなく、麺をまとめて手で押さえつけ、ぎゅっと絞るように行う。水切りをしっかり行うことで、食べる際の水っぽさを解消できるのだ。

 この水切りの方法はそうめん専門店の人に教わったもので、初めて目にしたときには驚いた。まるで濡れた布巾を絞るように、ぎゅっぎゅっと力を込めていた。それでもそうめんは潰れないのだから、細いわりにはタフな麺なのであります。