突然ですが、クイズです。かつて秋葉原で大ブームを起こした缶詰といえば、何でしょう?
答えは「おでん缶」と「ラーメン缶」であります。どちらもチチブデンキ(現在は閉店)がホット式自動販売機で販売し、2005年にはおでん缶が、2007年にはラーメン缶が売れまくった。旅行者が東京土産としてまとめ買いしたり、電化製品を見にきた客が店先で食べたりと、幅広い客層に支持されていたのだ。ああ、何もかもみな懐かしい……。
その後、おでん缶は「静岡おでん」や「銚子おでん」などのご当地おでん缶として発展し、今では各地の道の駅などでも売られている。一方のラーメン缶は、一時は「冷麺」などの傍流も生み出したが、どうもパッとしなかった。その原因は麺がコンニャクで作られていたからだ。本来は小麦粉から作るものをコンニャクで代用したのは、長期間スープに浸かった状態でも麺が伸びないようにするための工夫である。ただ、食感は麺というよりもしらたきそのもので、世の中の麺好きを納得させるものではなかった。
そんな状況が、今年の10月に一変した。東京都大田区にある製麺会社「丸山製麺」が、小麦粉から作った中華麺を初めて使った「らーめん缶・醤油らーめん」を発売したのだ。
■常識にとらわれない斬新な商品
丸山製麺は昭和33年創業の老舗で、中華麺だけでなく、うどんやそばなど多品種の麺を製造してきた強味がある。コロナ禍では取引先の店舗が軒並み休業し、売り上げが急減して経営危機にみまわれたが、新規事業として立ち上げた冷凍ラーメン「ヌードルツアーズ」がヒットして業績を回復させた。同商品は全国の有名ラーメン店と提携し、自動販売機で冷凍販売するという業界初の試みだ。その後も電子レンジだけで調理できる冷凍ラーメン「レンジdeヌードルツアーズ」を販売したりと、それまでの常識にとらわれない斬新な商品を開発・販売することで売り上げを伸ばしている。
そんなユニークな製麺所が、次の一手として手掛けたのが、このらーめん缶であります。共同開発したのは青森県八戸市にある「三星」で、サバ缶などの水産物を使った缶詰のほか、肉類や野菜類の缶詰も造れる食品加工のプロ集団。いわば実力者同士が業種を飛び越え、最強のタッグを組んだわけだ。