缶詰の専門家として、いろんな意味で探究心をそそられる。それがドン・キホーテの『鯖が2尾以上入ったさば水煮缶詰』であります。

 たびたびネットで「大容量で安い!」と話題になっているこのサバ缶は、缶詰業界で“4号缶”と呼ばれる大きさの缶が使われている。高さ約11cm、直径は約7.4cm。主にフルーツ缶に使われているものだ。

 サバの量(固形量)は280gと大容量だ。一般的なサバ缶の固形量が100〜140gだから、ドンキのサバ缶はざっと2倍量。それでいて価格は税込430円と、驚くほど割安だ。話題になるのも頷けるではないか。

 食品全般の価格が上がっているなかで、なぜこんな低価格が実現できたのか。検証していくと、なかなか興味深い事柄が明らかになったので報告したい。

■身の形状は世界標準

サバの形状。一般的なサバ缶とかなり違う

 サバの形状は、頭と尾、内臓を取り除いただけ。日本でサバ缶といえば筒切りが基本だから、ドンキのこの形状は手抜きをしたように見えてしまう。だが、しかし! じつは、これが世界標準の形状のひとつなのだ。

 このドンキのサバ缶はタイで製造されている。製造コストを低く抑えるために、日本企業が同国の缶詰工場に製造を委託するケースは少なくない。その場合、日本人が好む仕様(原料の形状や味付け)でオーダーするのが普通だけど、ドンキのサバ缶はおそらく、ほぼ現地仕様のままだろう。余計な手間が掛かっていない分、コストを抑えられるわけだ。

日本製のサバ缶の一例。原料のサバは体長30cm以上の個体が多い

 身の形状は味と関係がないからいいとして、懸念されるのはサバのサイズ。ドンキのサバ缶には体長15〜20cmほどの小型サバが使われており、あまり脂が乗っていない可能性があるのだ。ちなみに、日本製の一般的なサバ缶は、体長がおおむね30cm以上の個体が使われることが多い。

 しかしまあ、論より証拠だ。そのままひと口食べてみると、腹身はそれなりに脂が乗っていてちゃんとおいしい。背身の方は多少モソモソ感があるけど、味は悪くなく、生臭みもなし。値段を考えると、文句のつけようがない。

 あとは280gという大容量を、どうやって使い切るかが問題となる。缶詰は保存食だけれど、ひとたびフタを開ければ普通の食べ物と変わらず、常温で放置すれば傷んでしまう。なので、今回の“CAN”P料理は、1缶で2品、約4名分の料理を一気に作ることにした。