食べることが好きな人のあいだで、たまに話題に上るのが食品添加物の話。その名を聞いただけで嫌悪感を示す人もいれば、「紅ショウガは赤い方がいい、たとえ着色料を使ってでも!」という人もいて(ぼくです)、人によって捉え方は様々であります。
コンビーフに使われている「発色剤」も食品添加物のひとつで、主に「亜硝酸ナトリウム」のことを指している。じつはコンビーフに限らず、加工肉ではよく使われているんだけど、その目的はなんなのだろうか?
■風味付けの役割もあり
亜硝酸ナトリウムには、食中毒を起こす菌類の繁殖や毒素を防ぐことができる殺菌作用がある。とくにハムやソーセージには猛毒を放つ「ボツリヌス菌」が繁殖しやすい。19世紀のヨーロッパでは、自家製のハム・ソーセージを食べて食中毒になった人が多かったそうだ。それがトラウマになったのか、ボツリヌスという言葉もラテン語のソーセージ(Botulus)にちなんでいる。悪い菌に食べ物由来の名を付けるなんて、よほど大変な思いをしたのだろう。
また、亜硝酸ナトリウムには殺菌以外の効果もある。肉の赤色を保つ効果と、ケモノ臭さを抑えて好ましい匂いを与える効果だ。ハム・ソーセージに特有の熟成したような風味(塩漬フレバーと呼ぶ)は亜硝酸ナトリウムによるところが大きいのだが、それを好むかどうかは人それぞれだと思う。加熱した肉本来の風味とは違ったものになるからだ。
■無塩せきは亜硝酸ナトリウム不使用の意
さて、コンビーフにおける亜硝酸ナトリウムの使用目的は、ハム・ソーセージのそれとちょっと違う。肉の赤色を保つ目的と、風味付けの目的は同じだけど、殺菌作用はあまり期待されていない。なぜなら、コンビーフは熱に強いボツリヌス菌でさえ殺菌してしまう加熱処理が行われるからだ。
ならば、亜硝酸ナトリウムを使わないコンビーフがあってもいいかも? そんな要望に応えた商品が、この10年くらいのあいだに少しずつ増えてきた。パッケージに「無塩せき」と書かれているのがそれで、その言葉の意味は「亜硝酸ナトリウムを使わず塩漬けしています」となる。