僕の周囲には、なぜか缶詰好きが多い。缶詰博士である僕のもとに「類は友を呼ぶ」的な作用で集まったのかもしれないが、ま、それはともかく。彼らにはひとつの共通点がある。
それは、凝った食べ方をしないこと。好みの味に味変したりはするけど(コンビーフにマヨネーズをかけるなど)、あまり手の込んだことはやらない。だから気軽にパカパカ開けて食べている。
そのもっともわかりやすい例は、「ぶっかけごはん」であります。
熱々の白ごはんにサバ缶をぶっかける。イワシ缶をぶっかける。イカのしょう油煮缶をぶっかける。そんな、料理とも呼べないような食べ方を愛する人が意外と多い。
僕が一番好きなのは、サバ水煮缶のぶっかけごはんだ。サバを缶汁ごとぶっかけて、しょう油を垂らすだけでしみじみとおいしい。缶汁にはサバが持っているDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)という健康成分も溶け出しているから、残さず摂取している。
■作家・荒俣宏さんは鮭缶でぶっかけ
友人Sは、キャンプに行くと必ずスイートコーンの缶詰を持ってくる。バター&しょう油で香ばしく炒めたものでビールを飲みつつ、全部は食べない。半分ほど残しておいて、ごはんにぶっかけて〆にするのだ。その際に、追いバターと追いしょう油で味を濃くするのがコツだという。やってみると確かにウマい。
鮭缶のぶっかけごはんを愛するのは、作家の荒俣宏さんである。この方も缶詰大好き人間のひとりで、中でも鮭缶が大好きだという。
荒俣さんのぶっかけ方は以下の通りだ。
1:熱々の白ごはんに鮭缶を汁ごとぶっかける
2:大根おろしもぶっかける
3:しょう油を垂らせば缶成(完成)
鮭缶だけでなく、大根おろしを加えるのが缶所(勘所)。大根の爽やかな辛味が魚臭を和らげ、適度なとろみも加わるので、茶碗に口をつけてかっこめば鮭・缶汁・大根・ごはん・しょう油の混成部隊が喉を滑り落ちていく。
うう、想像したら食べたくなってきた。最近は大根おろしもパック入りで売っているから、わざわざすり下ろさなくても大丈夫。
ちなみに荒俣さんは鮭缶が好きすぎて、鮭缶製造大手のニチロ(現・マルハニチロ)へ就職してしまったという筋金入りの缶詰好きだ。