mr.kanso(ミスター・カンソ)はお好み焼き缶詰だけでなく、たこやき缶詰も販売している。さすが大阪の企業、粉モンの本場であります。こうなったら焼きそば缶詰も販売してほしい。
ラベルには「世界初!」と書かれており、前人未踏の挑戦をしたことがわかる。しかし、気になるのはソースが見当たらないことだ。前編で紹介したように、お好み焼き缶詰では小袋入りのソースが別添えされていたのだ。
たこやきだって、ソースをかけるのがスタンダードな食べ方である。ひょっとして、ソースなしで食べるタイプのたこやきが入っているのだろうか? それとも、新技術を応用したパウダー状のソースがまぶしてあるとか?
さまざまな期待を込めてフタを開けると、驚きのビジュアルが待っていた。
たこやきがソースの海に浸っている。「なるほどその手があったか」と感心したけど、すぐに不安になってきた。食感がぶよぶよになっているのが容易に想像できるではないか。
しかし、ソースは一般のものと違い、粘度を高めたジェル状になっている。たこやきに染みこみ過ぎないように配慮されているわけだ。また、ソースの甘辛い味がたこやき全体に絡む作用もあるだろう。いずれにしろ、たこやきとソースを一緒に詰めるために知恵を絞ったのだ。
撮影日の気温は3℃ほどで、日陰にいると体が震えてくる。熱々のたこやきを味わうには絶好のコンディションで、もしたこ焼き器を持参していたら、せっせと焼き続けているだろう。
このたこやき缶詰も、温めた方がきっと美味しいはずである。でもソースに浸かったまま加熱するのが恐ろしい。もし火加減に失敗したら、たこやきがソースで煮込まれて、さらにぶよぶよになってしまうかもしれない。
ということで、常温のまま食べることにした。箸上げすると持ち重りするほどの重量があるが、たこやきの重さのほか、ジェル状のソースがまとわりついているからだろう。鼻先に持ってくると、匂いは確かにたこやきそのもの。では、いただきます!
ジェル状のソースは、ほどよい甘辛さで好ましい。だが、たこやきの食感に戸惑ってしまう。まるでおでんのタネのちくわぶみたいだ。でも、ちゃんとタコも入っているし、お味でいえば確かに「たこやき」。
大阪の友人と一緒に、この缶詰を食べたことがあるのだが、彼の感想を引用しよう。
「なんやこれ、たこやきとちゃうで。アカンてこんなものは!」と怒ったあとで、飲み込んでしばらくしてから「んん? なんや、今やっぱりたこやき食べた気がするわ」
おわかりいただけただろうか? 食べている最中は不満が出るが、飲み込んだ後には満足感が得られる。それがたこやき缶詰の醍醐味であります。