缶詰にとって、米は大切なパートナーだ。なぜなら、日本で缶詰製造が始まった明治時代以降、多くの缶詰が「ごはんのおかず」になるよう発展してきたからであります。
古い例だと、明治21(1888)年に発明された牛大和煮缶詰は、佃煮をヒントに生まれた(それまでは水煮か塩味が多かった)。佃煮といえばごはんの供であり、その甘辛い味は米本来の香りや甘さを引き立たせてくれる。
そんな、缶詰とは切っても切れない間柄の米が、今夏は不足に陥った。スーパーには、精米の替わりにパックごはんが並ぶという異常な状態が続き、たまに入荷があると買い占めようとする人が出てくる始末。メディアで「令和の米騒動」と呼ばれる、この騒ぎの主な原因は、米の消費量の減少に合わせ、米の生産量を減らしてきた政策のせいだとぼくは思っている。
と、そんな折ではあるけれど、今回の記事はあえて「おむすびにするとウマい缶詰選手権」にした。第1回を書いたのが2022年だったが、2年が経過して新たな缶詰が登場してきたので、第2回を開催しようという心算だ。この2年で登場した新顔を、ぜひ紹介したいのであります。
■後を引くような甘じょっぱさ
まずは、今年4月に発売された伊藤食品の「あいこちゃん ご飯にかける牛カルビそぼろカレー味」を紹介したい。牛カルビのそぼろ肉にタマネギとニンジンを合わせ、カレー味に仕立てた缶詰であります。
缶に「ご飯にかける」とわざわざ表示しているくらいだから、おむすびにしたって間違いなく合うはず。味付けはやや甘めで、スパイスの風味はちゃんとある。けど、それよりも後を引くような甘じょっぱさが特徴的だ。隠し味にしょう油が使われているからかもしれない。
■カレーパンのおむすびバージョンのような味わい
炊きたてのごはんで牛カルビそぼろカレー味を包んで成形し、表面に塩をまぶしてから海苔で巻いて、缶成(完成)!
そぼろは心地良い歯応えがあり、噛んでいると甘じょっぱいカレーの味が口いっぱいに広がる。優しい味付けなので、おむすびの表面にまぶす塩は多めにしたほうが良さそうだ。あるいは、具の量を多くするのもいい。この缶詰は汁気が少ないので、具を多くしても汁が表面に漏れ出る心配はなさそう。
ところで、食べ進むうちにおもしろい発見があった。この牛カルビそぼろカレー味は、どことなくカレーパンの中身のような味なのだ。カレーパンの外側をごはんに変えて食べているような、そんな不思議な感覚になっておもしろかった。