山形県の郷土料理「ひっぱりうどん」をご存知だろうか。

 茹でたての温かいうどんをめんつゆに浸して食べるのだが、その際、めんつゆにサバ水煮の缶詰(缶汁も少々)と、納豆を混ぜ入れるのが特徴だ。他には好みの薬味(青シソとか)なども入れて、それらの具をうどんにまぶしながら「ずるずるーっ」といただくのであります。どこの家にもありそうな食材で作れるから手軽だし、サバのダシが加わるために、いつものめんつゆの味がパワーアップするという嬉しいオマケもある。

 ひっぱりうどんのようなサバ缶のアレンジ料理は、じつは日本の各地に存在する。それらに共通するのは、どれも手間が掛からないわりに、ちゃんとおいしく出来るということ。そんな料理を参考にしつつ、さらにシンプルに作れるものはないかと試行錯誤した結果、いくつかの料理が缶成した。

 今回は、それらのなかでもオススメの3品を紹介したい。

■サバ缶の味にこだわるのが唯一のポイント

サバ水煮缶とガリの組み合わせ

 1品目は、サバ水煮缶にガリ(酢生姜)を組み合わせる料理だ。これまで思いついたサバ缶料理のなかでも、材料の少なさとシンプルさではダントツの1位であり、誰に紹介しても「こんなにシンプルなのにウマい」と高評価をいただいている。

 調理が簡単すぎるゆえに、使うサバ缶はおいしいものを選ぶのが唯一のポイントになる。今回は岩手県にあるタイム缶詰の「生さば水煮缶」を取り上げた。世界三大漁場といわれる三陸沖で獲れたサバを、生原料から缶詰にした逸品なのだ。つまり冷凍原料を使っていない、とてもぜいたくなサバ缶だ。

 一方のガリには、とくにこだわりはない。薄切りになっていて、例の甘酸っぱい味が付いていればOKであります。

■不思議と寿司を食べている気にさせる

ガリをのせるだけ!

 かくのごとし。缶汁を切ったサバの身にガリをのせれば缶成!

 ほどよく塩気が利いたサバの身と、甘酸っぱい味のガリの組み合わせは、ちょっと寿司を食べているような気にさせる。ガリの風味によってサバの脂身はすっきりし、肉質がみっちり詰まった背身の方は、ガリの水分が加わることでしっとりジューシーになる。好みでワサビを加えたり、酢飯もいっしょに食べれば、さらに寿司っぽさがUPすること間違いなし。

 なお、この食べ方だと缶汁はまったく使わない。じゃあ余った缶汁はどうするのかというと、スープにして活用するのであります。