缶詰をそのまま食べるなら、常温の状態よりも湯せんで温めたほうが断然おいしい。……ということは常々申し上げているが、今回の話題は缶詰ではなく、魚肉ソーセージ(ギョニソ)であります。缶詰と同様に、ギョニソも湯せんで温めると抜群においしくなるのだ。知ってました?
常温のギョニソはモソモソした食感だけど、湯せんで温めると一転してなめらか食感となり、とくに表面はモチモチでたまらない。魚肉に含まれる脂分が熱で溶け、あらためて全体に行き渡るためであります。湯せんのやり方はとても簡単で、ケーシング(包装フィルム)をむく前のギョニソを、沸騰した湯に1分間浸けるだけ。
ギョニソは日本独自の加工食品だ。原料はスケトウダラなどの白身魚で、そのすり身に塩を加えてよく練り、脂分や香辛料などを加えてさらに練ってから、ケーシングに詰めて密封。最後に加熱殺菌するのだが、この製法、どこかで聞いたことがないだろうか? そう、缶詰と同じなのだ。ケーシングと金属缶という違いはあるけれど、密封&加熱殺菌することで常温保存を可能にした点はまったく同じ。その意味で、ギョニソと缶詰は同類なのであります。
■120℃の高温にも耐えられるケーシング

ギョニソが湯せんでおいしくなるという話は、ギョニソ大手のマルハニチロの社員から聞いた。ギョニソは工場で出来たてを食べるのが一番おいしくて、その味を家庭で再現するには「湯せんするのがベスト」だそうな。
早速試してみたのだが、ギョニソのケーシングには樹脂などが使われている。沸騰した湯(100℃)に浸けたら「ケーシングが溶けるんじゃないの?」と、一瞬考えてしまった。でも、そんなことはありえない。ギョニソは殺菌のために120℃で4分間という加熱処理を経ているから、そのケーシングが1分間の湯せん程度で溶けることはないのだ。
それよりも、湯せん直後のギョニソは高温になっているので注意が必要だ。湯から引き上げる際はトングなどを使い、表面が冷めるまでは放置。触れる温度になってからケーシングをむくべし。
■トクホ取得のギョニソもあり

そんなギョニソの人気が、最近になって急上昇している。2024年の5月以降、毎月の販売金額が前年同月を上回っていて、とくに12月の販売金額は約1億6千500万円と、前年同月比でなんと140%も伸長した。あらゆる食品が値上がりするなかで、ギョニソは4〜5本パックで200円前後とまだ安く、買いやすいことは人気を集める理由のひとつだろう。
また、ギョニソはもともと低脂肪・低カロリーで、カルシウムやタンパク質が豊富に含まれている。最近は栄養機能食品や特定保健用食品(トクホ)を取得したギョニソが売れているから、健康志向の人にもニーズがあるようだ。