■本流は無情の濁り…… 支流へ転進! 美しいアマゴに出会う

 期待と不安で、年甲斐もなくなかなか寝付けませんでしたが、当日の天気は晴れ。朝6時の気温は0℃、水温は2.3℃とかなり低いです。狙っていたポイントの第一候補にはすでに先行者がいたので、すぐさま第二候補へ急ぎ足で向かいました。いよいよ釣り開始です!

 明るくなってきて気づいたのですが、水位こそ目立って増えていないものの、かなり濁りが強くなっていました。足首くらいの深さなら水底が見えますが、脛より深く入るとほとんどわかりません。入渓した場所周辺では川床を掘るような工事が何箇所も行われており、雨で盛り土が流れて濁りの原因になっているのでしょう。3時間ほど釣りを続けましたがアタリすらなく、うなだれながら川から上がりました。

先日の南岸低気圧がもたらした雪もほとんど消えていました。どこか春の風情が漂っています

 しかし、待望の解禁日です。簡単に諦めたくはありません。天竜川水系は数多の支流群も魅力です。シーズン中何度か足を運ぶ、山あいの渓流へと向かいました。昼前に到着した小さな渓には、先行者の車がすでに何台も停まっていました。例年よりはるかに少ない積雪は川岸にまばらに残っており、釣り人の足跡が無数に付いています。それでもと流れを覗くと、流心の“かけ上がり”にゆらゆらと泳ぐ魚影が確認できました。

煌びやかなアマゴ。ストマックポンプで胃の内容物を確認、クロカワゲラのニンフがお好みのようでした

 はやる気持ちを抑えつつ、渓流用の支度に変更して川に降りました。件の魚は釣れませんでしたが、釣り上がること30分あまりで、ついにフライを咥えたアマゴが水面を破りました。まさに渓流の宝石、美しい魚体が春のような日差しに輝いていました。ようやく“解禁”です。

■3日目、本流解禁フィッシュはイワナ

すっかり回復した水色に期待が高まります。暖冬のせいか、すでに瀬に絡んで釣果が出ているようでした

 翌日は上伊那の南部(初日より下流部)を中心に川を見て回りました。本流はむしろ濁りが強まり、支流の目ぼしい箇所をいくつか探りましたが、魚の反応はありませんでした……。

 そして3日目、初日に入ったポイントの少し下流(本流)で釣りを開始しました。濁りも引いて水色も良く、朝8時の気温は約8℃、水温は8.2℃と暖かく、昼過ぎには水の緩みを感じて測ると、水温は10.3℃まで上がっていました。

いかつい顔、迫力あるボディに見惚れてしまいます! こういう時に限ってカメラを車に置いてきたので、スマホで撮影

 流心を跨いでスイングし、リトリーブしようとした瞬間、鈍い抵抗を感じました。何かゴミの入ったビニール袋みたいなものが掛かったのかと思っていると、ラインからわずかに躍動が伝わってきます。魚? 興奮しつつも、やや半信半疑のまま手元まで引いてくると、いきなり動きが変わりました! 急に激しく身をくねらせる魚は、走らない代わりにかなりの重量感があります。なんとイワナです。慎重に浅瀬まで寄せてネット(内寸46cm)に導くもはみ出しそうで、かなり慌てました。隆々とした丸太のような体躯の魚体は、少しブルックトラウトのような特徴もあります。とにかく美しい魚で、ようやく溜飲を下げることができました。

 その後も何度かアタリがあり、さらに大きな魚も掛かったのですが、目の前でフックアウトしてしまいました。午後になると風が予報よりずっと強く、南風に翻弄されて自分を釣りそうだったので終了としました。長野県の早春の釣りは南信(県南部)が楽しいかもしれません。