■イワナの溜まり場で

銀色の雫が流れを静かに打ちます。雨の緩急のタイミングを見計らっての釣り

 まるで大気が呼吸をしているかのように雨足は強くなったり弱くなったりを繰り返していました。ドライフライへの反応はいいのですが、濡れてふやけた指先で結んでいると、フライがすぐに濡れてしまいます。そこでドライをやめ、沈める釣りに変更しました。

 流れに沿わせるようにゆっくりと流していくと、スッとラインが吸い込まれました。すかさず合わせると、しっかりとフッキング! まずまずの感触に期待が高まります。慎重に寄せてきてネットに導いたのは、丸みを帯びたメス。もう一度流すと、さらにひと回り大きなオスのイワナがフライを口横にフライを咥えてくれました。しゃくれた顎が印象的でした。

雨が似合う深山のイワナ。発達した尾鰭に凄みを感じました

 実はここは魚が溜まりやすい、過去に幾度も入っているお気に入りの場所です。もうひと粘りすればさらに大物が出そうな気がしたのですが、帰りの所要時間も考えると、ここで突っ込まないのが肝心でしょう。強くなりつつある雨の中でしたが、足取りも軽く渓を後にしました。そろそろ紅葉が本格的に始まりそうでした。

渓の花、ダイモンジソウの花が淵を彩っていました