■学習していく魚たち! 厳しい地形も守ってくれる
筆者は学生時代から足を運んでいるので、約30年このエリアで竿を出しています。エサ釣り、テンカラ、ルアーフィッシング、そしてフライフィッシング。道具は変わりましたが、釣果にさほど大きな違いは感じていません。以前より大物が釣れる割合が若干減った気がしますが、道具の違いもあれば、年に2〜3回程度しか来ないので正確なところはわかりません(上達したと思っていたのに、本質的な釣りのウデが落ちた?)。
車で近くまでアプローチ可能な人気河川だけに、シーズンが進むにつれかなりスレてくるのは当然です。簡単に釣られる魚たちは持って帰られ、残った魚たちはどんどんと賢くなっていきます。リリースされても学習し、警戒心が強くなります。
さらに、雑魚川に関しては地形的な優位もあります。林道が開通したとはいえ、実際にアクセスがいいのは上部の半分程度で、下流、つまり秋山郷に近づくにつれ車道と川との距離、標高差が開いていきます。一部遊歩道もあるものの、大半はポイントまで薮と急斜面で、釣り人の容易な侵入を阻んでいます。リスクも高く、下流部を自在に釣り歩ける人は限られているでしょう。一般的なフィールドはイワナの生息する流域のほんの一部、しかも激戦区だけにそう易々とは釣れない魚たちになっているのです。
長野県の漁業調整規則よりも禁漁期間を長く設けてあり、解禁日が4月16日に設定されていること。また、キープできるサイズが20cmより大きい魚となっているのを失念しないようにしましょう。また、(日釣り)遊漁券が550円というのも破格の安さですね。
■ルールやマナーを守りつつ「体験することがきっと大事!」
種の保存を考える場合、全くの禁漁にしてしまうのは、非常にわかりやすい方法です。しかし、あまり知られていませんが、永年禁漁のエリアで、実は原種のイワナはほとんど残っておらず、外来種のトラウトとの交配が進んでしまっている場所もあります。
雑魚川はすでに車道があり、一般車両が自由に通行できるエリアです。禁漁にしても密漁者が後を断たないでしょう。山奥なので監視するのも一苦労です。むしろ定期的に釣り人が入ることで、ルールを遵守するための相互監視の抑止力も働いているのではないでしょうか。
不法投棄や河川環境が大きく変わるような事案が発生した際、釣り人は些細な変化にも敏感です。迅速に報告して対応することで、手遅れになる前に対処できるかもしれません。
これは釣り人に都合のいい理由づけなのかもしれません。けれど、自然の大切さを知るには、実際に体験して魅力を享受することから始まると思います。リアルな環境を体験することで、やがて僅かな変化にも気づく素養が育つでしょう。
アウトドア、自然の中に出掛けないことが、自然保護だと思っていませんか? 例え自宅にいたところで、僕らの毎日の生活自体は多かれ少なかれ、間接的に自然環境へ何かしらの影響を与えています。最近あまり耳にしない“エコ”というワードがありますね。“SDGs”も自然環境への配慮が内含されていますが、形だけ、言葉に踊らされるではなく、自分自身の経験から実感したそれの方が、より長く持続する、そう思っています。