秋田県と岩手県の県境に位置する秋田駒ヶ岳は、標高1,637mの成層火山で、日本二百名山の一つに数えられる名峰である。火山特有の荒涼とした地形と、高山植物が織りなす多彩な景観が特徴であり、例年7月から8月にかけてはコマクサやチングルマといった貴重な花々が山肌を彩る。
なかでも「八合目登山口」からアクセスする「新道コース」は、標高1,300m地点までバスで上がることができ、初心者や観光客でも登山体験ができるコースとして知られている。
今回はコマクサや「ムーミン谷」と呼ばれる幻想的な草原など、秋田駒ヶ岳の魅力を紹介する。
■8合目までバスで直行。標高差わずか300mの好条件
秋田駒ヶ岳・八合目登山口は、秋田新幹線の停車駅でもある「JR田沢湖駅」が最寄駅となる。田沢湖駅から路線バスで「アルパこまくさ」まで移動し、そこから環境保全のために走る専用のシャトルバスに乗り継ぐのが基本。
マイカー規制が敷かれるのは例年6月中旬から9月中旬にかけてで、車でアクセスする場合も登山口まではこのバスを利用することになる。なお、東京から東京駅 6時32分発の秋田新幹線に乗車できれば、午前中には登山口に到着できる。
8合目はすでに標高1,300mに位置し、山頂までの標高差はわずか300m。整備された登山道と美しい高山景観のなかを歩くこのコースは、まさに「歩きやすく本格的な登山を楽しめる」ルートといえる。

■登山ルートの概要。男女岳からムーミン谷まで、多様な表情をもつ周回コース
8合目からの代表的なルートは、阿弥陀池を経由して秋田駒ヶ岳の主峰・男女岳(おなめだけ)を目指すピストンコースである。また、阿弥陀池から小岳、ムーミン谷を巡る周回コースも人気が高く、花と山々の景観の両方を堪能できる構成となっている。
●8合目 → 阿弥陀池
序盤は比較的緩やかな登山道を進む。整備された木道が続き、森林限界を超えると景色は一気に開ける。登山口から1時間ほどで阿弥陀池に到着する。

●阿弥陀池 → 男女岳山頂
阿弥陀池から男女岳山頂までは、山の斜面を登っていく。急登ではあるが距離は短く、天候がよければ山頂から田沢湖や岩手山、鳥海山まで見渡せる大展望が広がる。

●阿弥陀池 → 小岳 → ムーミン谷
周回ルートをとる場合は、阿弥陀池から小岳を経由してムーミン谷へと下り、八合目に戻る。このルートは火山性の荒地と草原が交互に現れ、花と風景の変化に富んでいる。
