■イブニングの奇跡! 「2回連続同じイワナが釣れた!」

 結局、この場所がめっぽう気に入ってしまい、一日開けて再びイブニングを狙って出かけてみた。水温が15℃を越えて高いこともあってか、このプールでは日中は水面付近での反応はない。ウェット(フライ)を流すと釣れるのだが、ドライ(フライ)には無反応だ。前回のライズの様子だと、さらに大物が釣れる可能性は多分にありそうだ。

ダイブニングのライズ狙い2回目で釣れたイワナ(1回目、3回目と同じ個体)

 例によって釣り人はいない。釣りをする準備だけして、ひたすら流れを見つめる。この時間のワクワク感がたまらない。予定よりちょっと遅かったし数も少ないが羽化が始まり、続けてライズの数も増えていく。流しても流しても、なかなかフライを咥えてくれない。しかし粘っているとついに魚が飛び出した!

 かけた場所こそ数m違っていたが、同じような出方、パワーで同じコースで走っていく。前回で慣れていたので、比較的スムーズに手元に寄せながら、ある“疑惑”が頭に浮かぶ。

 果たして…… 釣れたのは前回のイワナのそっくりさん! 家に帰って写真を比べてみると、紛れもなく同じ個体だった。相当数の魚が入ってそうな感じなのに……。嬉しいような、残念なような……。

■激しい好き嫌い! 想像以上に繊細なイワナのライズを狙って

 一般的にはヤマメに比べてイワナは悪食で、流れてくるものは何でも興味をもつイメージがあるが、ことライズの最中では話が違うようだ。セレクティブで偏食傾向のあるイワナたちは、食に妙に神経質すぎる。「好き嫌いはダメだよ」って躾けられなかったの?

大量に飛び交うエルモンヒラタカゲロウとそれを模したフライ

 夕方、水温が12℃台まで下がると、水生昆虫のハッチに合わせるようにライズが激しくなっていく。時期的にこのポイントではエルモンヒラタカゲロウが盛んに飛び交っているだが、それを模したフライだと、反応はするが食いが浅い感じだ。どうも(お互いに)しっくりきてない気がする。

 何度もフライを流し、ようやく釣れた魚の胃の中をストマックポンプで調べると、種類もステージも様々すぎて、明確な答えが分からず……。

■3度目の正直! 「謎は全て解けた?」

 何がドンピシャでヒットするのか。どうしても気になる。明確な答えが欲しくて、またまたイブニング狙いで出かけてみた。

大量のエルモンヒラタカゲロウに混ざっていた少数のオオマダラカゲロウ

 行くたびに答えに近づいている感じがするのは、なんだか謎解きか探偵気分だ。流下するメイフライを慎重に観察していると、大量のエルモンヒラタカゲロウに混ざって、わずかにオオマダラカゲロウのスピナーを発見した。そういえば、前回ストマックポンプを入れたときにもコイツが混ざっていた!

写真奥のイワナが、イブニングのライズ狙い1回目、2回目で釣れたイワナと同じ個体だ

 ヤマメ釣りで使っていたマダラカゲロウ系のスペント(力尽き羽を広げて水面に張り付いている状態)がフライボックスに入っている! さっそくそれを結んで流れに漂わせると…… 一発で食った! しかも今までの神経質そうな出方とは違い、捕食するシーンを観察できるほど大らかに、のんびりとフライを咥えてくれる。次から次へとおもしろいようにハリにかかる。暗くなってフライを見失い、ライズに慌てて遅合わせしてもしっかりとフッキングしているくらいだった。

 これでスッキリ! ひとまずの謎は解けたが、梅雨が明け夏が来れば再び謎解きの釣りになりそうだ……。そのときイワナたちはさらに成長して、より深く竿を曲げてくれるに違いない。