■フルーツ缶に起こりやすいメイラード反応

最後に取り上げるのはフルーツ缶だ。これは賞味期限が切れて2年10か月経ったリンゴのシラップ漬けだが、上下のフタがぱんぱんに膨らんでいる。ただし、缶の密封性は保たれており、中身は漏れていない。
先ほど、缶が膨らむのは「バイ菌が入り込んで繁殖し、炭酸ガスが発生したから」と書いたが、じつは他の要因もある。内容物の糖とアミノ酸が反応して(メイラード反応)、炭酸ガスを発生させるという現象だ。とくに賞味期限切れのフルーツ缶では起こりやすい現象であります。

フタが膨みはじめたフルーツ缶は危険だ。放置していると、いずれフタの切れ目などが内部からの圧力に負け、中身が漏れ出てくるのだ!
そうなる前に缶詰を開け、中身は捨てるしかない。ただし、開けるには特別なテクニックが必要になる。深めのボウルなどに水を張っておき、なかにフルーツ缶を沈めて、水中でフタを開けるのだ。内部の圧力が高まったフルーツ缶は、プルタブを引き起こした瞬間に、中からシラップや果肉が飛び出してくる。しかし水中であれば、周りに飛び散ることがない。これ、とても大事なことなので憶えておいてほしい!

さて、そうして無事フタを開けたリンゴ缶の中身はこんな感じだった。本来は白いはずのリンゴが褐色に変化している。これはメイラード反応によって起こる「褐変」という現象だ。
このリンゴ缶は、バイ菌が繁殖しているわけではないから、食べることは出来る。そこで勇気を出して食べてみると、まず強い金属臭がある。食感はまるで固いスポンジのようで、果汁が抜けて繊維質が残った感じだ。もちろんおいしくないので捨てるしかない。
缶詰で設定されている「賞味期限」というのは、その期間内であれば本来のおいしさを保証するという意味を持つ。もし期限を過ぎた場合でも、密封性が保たれている限りは食べても健康に害はないけど、味は次第に劣化していくのだ。なので、缶詰は素直に賞味期限内に食べることをオススメしたい。
とくに注意が必要なのは、メイラード反応を起こしやすいフルーツ缶。3年は保つからと放置せず、入手したら早めに食べるのが良し!