日本でもっとも生産量が多い缶詰は、「ツナ缶」であります。そのまま食べてよし、マヨ和えや炒め物にしてもよし。家庭料理にとどまらず、コンビニの惣菜や外食店の料理にも使われており、もはや缶詰というよりも食材の一種。

 だが、しかし! ツナ缶には時折、「体に悪い油を使っている」「水銀で汚染されている」などと、黒い噂が流れてくる。それらは果たして本当のことなのだろうか?

■ツナ缶に使われている油の種類

ツナ缶の油には植物油が使われている

 黒い噂のなかでも、たびたび話題になるのが「油漬けタイプのツナ缶に使われている油は体に悪い」というもの。極端な例だと、SNSで「工業用オイルが使われている」という投稿を見たことがあったが、機械油のことを指しているのだろうか? これは、もちろんフェイク情報だ。

 油漬けタイプのツナ缶に植物油が使われるのは、日本だけでなく、世界共通。その種類はオリーブ油、綿実油(コットンの種から抽出)、こめ油、ひまわり油、大豆油などがあり、どれも料理用として広く使われているものだ。ツナ缶メーカーは、これらの油から自社商品に合うものを選び、油脂メーカーなどから仕入れて使っている。もちろん、新品の油であります。

70gのツナ缶に含まれる植物油は大さじ1杯くらい(商品により差あり)

 ちなみに、油は5大栄養素のひとつで、健康を保つために欠かせない成分だ。ツナ缶に使われている植物油でも、オリーブ油はオレイン酸(オメガ9脂肪酸)を多く含んでおり、綿実油と大豆油はリノール酸(オメガ6脂肪酸)を多く含んでいる。どちらも適量を摂取することで、悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを維持する働きがある。

 とはいえ、どんな種類の油でも摂りすぎは体に悪い。そこで摂取量を減らすため、ツナ缶の油は切って(捨てて)使うことがほぼ常態化してきた。それがいつしか「体に悪い油だから捨てる」と、誤解されたのではないか。

 ようするに、問題は摂取量であります。一般的な油漬けタイプのツナ缶(内容量70g前後)には、おおむね15g前後、大さじ1杯分くらいの植物油が含まれている。その量が多いと思う場合は、適度に切って使えばいいのだ。

■規制値を上回る水銀量!

ツナ缶は水銀で汚染されている?

 去年、ネット上で話題になったのは「ツナ缶は水銀で汚染されている」という噂だった。その元になったのは、フランスの海洋環境保護団体が公表した調査結果だ。フランス、ドイツ、イギリス、スペイン、イタリアのスーパーで入手した148缶のツナ缶を無作為に選んで調査したところ、その57%から規制値を上回る水銀が検出されたという。

 ツナ缶には確かに水銀が含まれている。それだけでなく、メチル水銀という、より毒性の強い水銀が含まれている場合がある。メチル水銀を大量に摂取し続けると、神経系統に異常が出て、運動失調(わけもなく転ぶ)、視野狭窄(見える範囲が少なくなる)、聴覚障害、手足の震えなど、様々な症状が出るという。とくに胎児に強い影響を与えるので、妊婦さんは注意しないといけない。

 と、こんな話を聞けば「いっそのことツナ缶は食べないほうがいい」と思うかもしれない。