■パサついた食感と金属臭

そのまま味わってみる。見た目はきれいだが……。

 ひと口食べてみると、食感がやや固く、パサついている感じがある。長いあいだ塩水(缶汁)に浸かっていたため、浸透圧の作用で、身に含まれていた水分と脂分が塩水に流出し、サバ本来のジューシーさが失われたのだろう。

 ふた口目を食べると、味に違和感が出てきた。舌の上にわずかな苦みとえぐみが残るのだ。また、鼻から抜ける匂いには金属臭が含まれていて、それが食べ進むほどに目立ってくる。はっきりいえば、おいしくない。

 ただ、腐敗はしていないから健康に問題はない。例えばカレーの具に使い、スパイスの風味で劣化した味と金属臭をごまかすことも出来る。その判断は人それぞれで異なるだろう。ぼくは砂糖しょう油をたっぷりかけ、食べきった。

■缶表面に錆が浮いた缶詰

フチ部分に錆が浮いたキノコの水煮缶

 今度は缶に錆が浮いたパターンだ。このキノコの水煮缶の賞味期限は2016年だから、すでに期限が切れて9年が経っている。缶表面のフチ部分に錆が発生しているので、食べるのはちょっとためらわれる。

 こういう場合、中身が無事かどうかの判断基準は、上下のフタが膨らんでいるかどうかにある。もし膨らんでいた場合は、錆が内部にまで浸透して缶の密封性が破れ、外からバイ菌が侵入したことになる。バイ菌は食べ物に取りついて繁殖すると、炭酸ガスを発生させる性質があるので、缶が膨張するのであります。

■缶内面の劣化で強い金属臭

キノコ水煮缶の中身と缶の内面。底部分に黒い斑点が数か所見える

 この缶詰はフタの膨張が見られないため、中身は無事と判断した。開けてみても変色は見られず、水には透明感さえある。キノコをひとつ食べてみると、シャクシャクした食感と塩味があり、味にはまったく問題がないが、金属臭がかなり強い。そこで中身をボウルに移し、缶の内部を観察すると、底のほうに黒い斑点が見つかった。経年変化で缶の内面が劣化し、そこから金属臭がキノコに移ったのだと思う。

 古くなった缶詰は金属臭が強まる傾向がある。匂いは食欲に大きく作用するものだから、臭いと感じたら無理に食べることはないと思う。この缶詰も、残りは捨てることにした。すまぬキノコよ!