■姿は見えども…… 焦らされ、ようやく手にした一匹のイワナ

体長20cmに満たないイワナですが、この日ばかりは大満足です

 いざフライ(毛鉤)を沈めて流してみると、早々に2匹、3匹と魚影が反応するのが確認できました。深みや岩下の奥深くにじっと潜んでいるとばかり思っていたイワナたちですが、浅い駆け上がりにも定位している様子が見えます。

 「これならすぐ釣れる!」 そう思い気持ちがすっかり楽になりましたが……。

 魚は見えるものの、なかなか口を使ってくれません。各種ニンフに始まりストリーマーやアトラクター的なものまで、いろんなフライを試してみましたが興味は示しているようですが、まったく咥えようとはしてくれません。流し方、スピード、深さ、あの手この手で試しながら釣り上がっていきます。

 上流へ向かって2時間かけて300mほど釣り上がりました。好ポイントが続くのですが、気が付くとあれほど見えていた魚たちも姿が見えなくなっています。予定していた退渓の場所まで来てしまいました。これより上流は(夏場は)魚影も濃いのですが、険しさを増すので深入りは禁物です。最初に入ったポイントへ戻り、そのわずかに下流側からもう一度釣りを開始しました。すると、どこか岩陰に潜んでいたのでしょう、やがてゆらゆらと中層まで魚影が浮き上がってきたかと思うと、水中でゆるりと反転しました!  久々の魚の感触にすっかり舞い上がってしまい、ネットを握る手が震えます。

 いざ手元で見ると20cmに満たないサイズのイワナです。しかしながらピンと張ったヒレに雅やかに輝く美しい姿。まばゆい一匹にこの日一日が報われた気がしました。

 まだ渓流釣りシーズンは始まったばかり。この一匹にすっかり満足し、足取り軽く渓を後にしました。