■ポイントは缶汁を沸騰させて内部で循環させること

フタを開けて中の様子を確認し、ネギがしんなりしていれば加熱は十分だ。最後にしょう油を回しかければ缶成であります。
この料理のポイントは、缶汁を沸騰させて内部で循環させることにある。サバの旨味を含んだ缶汁が鍋底から沸き上り、ネギとバターに達してそれらの旨味を取り込んで、再び下降する。その循環のおかげでサバ、ネギ、バター3者の旨味が缶然一体(渾然一体)となるのであります。
今回はしょう油を小さじ1/2ほど加えただけで、あえて薄味に仕上げてみたが、それでも十分、味が付いていておいしかった。
ちなみに、塩分不使用の缶詰はサバ缶のほかにイワシ缶やツナ缶も出ている。マルハニチロは唯一、サケ缶まで出しており、魚種の多さの点で他メーカーから一歩抜きん出ている状態だ。
かつては「味付け済みでそのまま食べられる」という手軽さが缶詰のセールスポイントだった。とくに日本の缶詰は主にごはんのおかずとして発展してきたため、その味付けもごはんが進むように、濃いめにされていた(とはいえ塩分は少ない。例えば内容量150gのサバみそ煮缶なら、塩分量は缶汁まで含めて1缶当たり2g前後である)。
しかし、消費者の嗜好が多様化している現在、あらゆる味付けを施して売り出すのには無理がある。食塩不使用缶の登場によって、缶詰が料理素材のひとつとして認識される未来がやって来るかもしれない。
●今回の缶詰情報
マルハニチロ「さば水煮 食塩不使用 190g」