■もっともアウトドアに向かないのはオイルサーディン
もっともアウトドアに向かない缶詰は、ずばりオイルサーディンである。その理由は、缶内が油で満たされているからだ。フタを開けていると、必ず油がフタの上にあふれ出る。繰り返すが、必ずあふれ出る。油にまみれたフタは周囲をベタベタにする。
フタを開けるのが他の缶詰より難しいということもある。開口部が大きいので(サーディンを取り出しやすくするため)、缶上面のほとんどの部分がフタである。プルタブでフタを引っ張っているあいだ、薄いフタは湾曲し、どんどん開けにくくなる。おまけに缶が平たいため、指で押さえられる部分が少なく、途中で缶をひっくり返しそうになる。そこでまた油があふれてベタベタになるが、野外ではすぐに手が洗えない。悪態のひとつも出るだろう。
ただ、オイルサーディン側にも言い分がある。缶内を油で満たしているのは、サーディンをおいしく保つための工夫なのだ。使われる油もオリーブ油やひまわり油、綿実油などの高品位なもので、決して身体に悪いものじゃない。
そして、この油は料理に使える。サーディン丼を作るときなどは、別に油を用意しなくてもいいわけだ。
詳しくは、Vol.29「オイルサーディン頂上対決! 日本製と北欧製「サーディン丼」にして美味しいのはどっち!?」にも記した。
最後に、オイルサーディンと似た存在であるアヒージョの缶詰についても触れておきたい。
アヒージョは具材を油で煮る調理法なので、缶詰にする場合も缶に具材、油、調味料を入れ、密封してから缶ごと加熱して造られている。油の量はそれなりに多いため、摂取したくない場合は捨てるしかない。
ただ、アヒージョは油も楽しむ料理だ。素材のうまみが溶け出した油はおいしく、バゲットに染みこませたりして食べるとあっという間になくなってしまう。そんな食べ方を許せる人なら、アウトドアに持ち出してもいいと思う。
※本記事は『缶詰だよ人生は』(本の泉社缶、改め刊)に加筆・修正を加え、再編集したものです