■大和煮缶の汁はどうする問題
牛肉や鯨肉などの大和煮は、普通の料理には存在しない缶詰だけに特有の調理法だ。明治時代に鴨肉を砂糖、しょう油、みりんで味付けした缶詰が始まりで、味のイメージとしてはすき焼きが近いと思う。当時の缶詰は水煮か塩味が多かったから、この甘辛い味はかなり好評だったらしい。
巡り巡って現代人は、「味が濃いから」と大和煮缶の汁を捨てる人が多いと思う。夏場なら缶から垂らすことができるが、気温がだいたい20℃を下回ると汁はジェル状に固まり、肉に絡みつく。そうなると汁だけを捨てるのが難しくなるので、開缶前に湯せんで温め、汁を液状に戻さないといけない(画像は湯せんで温めた状態)。その後はツナ缶の油と同様、新聞紙に染みこませるなどの処理が必要になる。
この手間を考えると、汁がいらない人は、はじめから大和煮缶を選ばないほうがいいかもしれない。もっとも、現代の大和煮缶は昔よりも味付けが薄くなっている。人々の健康志向に合わせて、糖分と塩分を減らしているのだ。僕は大抵、汁ごとおかゆに混ぜて食べてしまう。