■木津川

 西天下茶屋駅から次の津守駅を経て、到着するのが木津川駅だ。この木津川駅、1日の乗降人数が平均で130人(国土交通省国土政策局・令和4年度)と大阪市内の駅では最少で、しかも駅前にはトタン壁の工場と雑草が茂った荒れ地がひろがっているだけ。商店はおろか自動販売機もなく「大都会の秘境駅」という異名がある。

 ただ木津川駅が寂れたのは70年代ごろからの話であり、かつては貨物駅兼用として大いににぎわっていた。とくに大正区に貯木場のあったころは、和歌山県で伐採された材木が運び込まれ、積み下ろしの駅として重要な役割を担っていた。現在も当時の名残として、貨物側線が敷設されたままだ。

「秘境駅」の名にふさわしいたたずまいの木津川駅。開業は1900年で現在の駅舎は1940年に建てられたもの

■汐見橋

 木津川駅から芦原町駅を過ぎると終点の汐見橋駅。かつて高野線のターミナルというだけあって、改札前のスペースは広くアーチ状の梁がある天井も高い。この汐見橋駅、昭和の終わりから平成のはじめにかけて脚光を浴びたことがある。「なにわ筋線」の整備計画によるものだ。

 駅舎外観には2020年に、「1900年代頃の賑わいあふれる汐見橋駅」というテーマの壁面アートが描かれている。すぐ隣には阪神なんば線の桜川駅があり、汐見橋駅だけをたずねるのであれば、こちらを利用したほうが便利だ。

汐見橋線の起点であり高野線の起点でもある汐見橋駅。現在の駅舎は1956年に改装。内装はレトロモダンな趣で、正面上部の観光案内図は、2016年に撤去された昭和30年代当時の「南海沿線観光案内図」をモチーフにしたもの 

 大阪駅からJR難波駅および新今宮駅をつなぎ、新大阪駅から関西国際空港駅までの直通も可能になる路線として計画されているなにわ筋線。当初はJRと南海線を汐見橋駅で接続させる予定だったが、その計画は中止となり、一時は汐見橋線の存続も危ぶまれることになる。「今のところ廃止の計画はない」と南海側はコメントしているが、将来的にはどうなるかわからない。

  今回紹介した3駅を訪ねる機会は、そう多くないのかもしれない。「都会の中のローカル線」に乗ってノスタルジックな駅を訪ねてみるのもいいだろう。