■100年前から変わらぬ姿の甲陽園駅
西宮七園のうち、甲風園、甲東園、甲陽園の「甲」は、西宮市の北西に位置する甲山(かぶとやま)が由来だ。これらのうち、もっとも甲山に近いのが甲陽園。近いというよりも、甲山のふもとから山腹にかけて位置している。
甲陽線の終点である甲陽園駅は、苦楽園口駅と違って「口」がつかない。つまり、甲陽園のエリア内に設けられていることになる。その駅舎は木造の平屋建て。高級住宅地の表玄関とは思えないほど質素だ。
ただ、駅舎が建てられたのは甲陽線の開業と同じ1924年。そのときから100年間、いまの姿を維持していて「近畿の駅百選」にも選ばれている。
駅前には飲食店や小さなスーパーが並んでいて、建物の裏側に山腹が迫っているという様子。そんな地形もあって、交通手段は電車よりも自家用車が多いため、駅が地域の玄関口である、という意識は低いのかもしれない。
■住宅街の外れにある北山ハイキングコース
苦楽園口駅前にあった秋祭りの提灯やのぼりは、甲陽園の駅前では見られない。祭りは苦楽園口駅が中心となるのだろう。しかし、祭礼神事が行なわれる越木岩(こしきいわ)神社は、地図で確認するとどちらの駅からも同じくらいの距離にある。そこで、今回の散策の最後に参拝することにした。
駅から甲陽園の中心に行くには、階段や坂を登る必要がある。これが結構、体力を使う。そして、約15分の道のりを歩くと、住宅地からはずれて夙川上流の山林へと至る。
この山は甲山とは別の北山という山で、ハイキングコースも設けられていた。コース内の登山道を歩くと、うっそうと茂った森林の中に滝があり、もう少し歩くと展望台や寺院もあるらしい。
ただ、この時点で時刻は午後5時だし、雨も降ってきた。まだ越木岩神社まで距離があるので、寄り道している場合でもない。
やむなく山を下り、ふたたび住宅街へ。家屋敷が密集する界隈の中に越木岩神社は鎮座していた。