■3つの路線が乗り入れている粟生駅
兵庫県は広い。北は日本海、南は瀬戸内海に面し、その面積は全国で12位、近畿2府4県では1位だ。そんな兵庫県の中南部、小野市の粟生駅から加西市の北条町駅までを結ぶのが北条鉄道北条線である。
北条鉄道の歴史は大正時代にまでさかのぼる。1913年に発足した播州鉄道は、2年後に加古川線北条支線を開業。粟生~北条町間が開通する。その後、播州鉄道は播丹鉄道に改称し1943年には国有化されたが、1985年の国鉄北条線の廃止にともない第三セクターとして再スタートを切っている。
路線の長さは13.7キロ。始点から終点まで8つの駅があり、そのうちの3駅が国の有形文化財に登録されている。それ以外の駅もそれぞれ特徴があり、今回は北条線の全駅を紹介したい。まずは粟生駅から田原駅まで。
起点となるのが粟生駅で、この駅には北条線のほかにJR加古川線と神戸電鉄粟生線が乗り入れている。
開業は播州鉄道時代の1913年で、現在の駅舎は2009年に改築。レンガ色の瓦屋根とアーチ状の入り口が印象的で、駅舎内には2022年にオープンしたカフェもある。
北条線と加古川線、神戸電鉄のダイヤはリンクしていて待ち時間は少ないが、どの路線のダイヤも原則として1時間に1本。あまりのんびりしている余裕はない。また、北条鉄道はICカードが使えないのでご注意を。
■粟生駅から網引駅へ
粟生駅を出ると田園風景がひろがり、田畑の間をゴトゴトと列車は走る。全線非電化のため、車両はディーゼルカー。ワンマン運転の折り返し運行である。
粟生駅の次が網引駅。所要時間は5分である。
マッチ箱のような小さな駅舎で、1984年に焼失したが2013年に再建。駅前には樹齢80年ともいわれるイチョウの木があり、秋には黄色く染まった艶姿を披露してくれる。このイチョウは2018年、景観形成重要樹木に指定されている。