メトロこうべから地上に出れば、新開地の繁華街だ。国道28号線、通称多聞通りをはさんで山側と海側にひろがり、海側には市立の総合型文化複合施設の「神戸アートビレッジセンター」や大衆演劇の「新開地劇場」、競艇場外発売所の「ボートピア神戸新開地」がある。山側はアーケード商店街で、落語を中心とした寄席の「神戸新開地・喜楽館」が2018年にオープン。商店街の東側は関西屈指の歓楽街である福原である。

■神戸アートビレッジセンター

 多聞通をはさんで南側の新開地本通りにある神戸アートビレッジセンター。現在は改修中のため、建物の装飾品は撤去されている。阪神淡路大震災後の1996年に神戸市が設置。若手芸術家育成と新開地の再生を主たる目的とし、地下1階、地上4階の建物の中にはアトリエやスタジオ、ギャラリーやホール、ミニシアターなどがある。リニューアルオープンは2023年3月の予定。

多聞通をはさんで南側の新開地本通りにある神戸アートビレッジセンター

■喜楽館

 多聞通をはさんだ北側のアーケード商店街内にある神戸新開地・喜楽館の入り口。かつての新開地には松竹劇場や神戸松竹座など数多くの劇場・演芸場が存在し、「東の浅草、西の新開地」とも称されていた。

多聞通をはさんだ北側のアーケード商店街内にある神戸新開地・喜楽館の入り口

■福原国際東映

 アーケード商店街からはずれて福原の入り口にあるポルノ映画専門館、福原国際東映。1960年代ころまでは20以上の映画館が並び、湊川で生まれ育った映画解説者の淀川長治は新開地を「神戸文化の噴水」と称したという。現在は福原国際東映のほかに、パルシネマしんこうえんやCinema KOBEだけが営業している。

アーケード商店街からはずれて福原の入り口にあるポルノ映画専門館、福原国際東映

 神戸といえば、横浜に並ぶおしゃれなエキゾチックタウンをイメージする人も多いだろうが、新開地には大阪の新世界にも似た下町情緒がある。とことんつき合ってみたいような魅力も感じられる。北野の異人館もいい、南京町もいい、ハーバーランドもステキなところだ。しかし、様々な娯楽がそろい、むき出しの欲望をすべて受け止めてくれる新開地は、化粧を落としたスッピンの神戸を見せてくれる場所なのかも知れない。

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