■新幹線下車から10分で没入できる秘境感

新神戸駅から至近にある布引の滝(雄滝)。落差45mの“日本の滝百選”は見事!

 新神戸駅の改札を出て、1階にある駅レンタカーの前からいきなり登山スタートである。東京駅を午前7時半に出る新幹線に乗れば、遅くとも10時半までには出発できる。

 歩き始めて1分で渓谷を吹き抜ける風に出迎えられ、10分もしないうちに落差40m以上の大きな滝を目の前にすることができるなんて、いまぼくが暮らす東京駅でも故郷の仙台駅でも考えられない感動のロケーションではないか。

 
布引貯水池は、日本最古の重力式コンクリートダム(国の重要文化財)が素晴らしい
雨量の多い日には貯水がオーバーフローし、下流に幻の滝「五本松かくれ滝」を作り出す
これが五本松かくれ滝。雨量の多い日の直後に出現するため“幻の滝”と呼ばれる

 布引の滝から先は、しばらく舗装路と水辺との共演が続くお散歩道。地元の方が走ったり、散策したり、川原でBBQをしていたり。水辺が多いため風が通り、歩いていて実に心地いい。個人的にはとても気に入っているコースだ。

 ぼくは六甲山地の一番の魅力を「渓谷」にあると思っている。そこに流れる豊かな水は沢となって渓を刻み、ときに瀬となり、ときに池となる。こうした水の流れともろい花崗岩質ならではの地形の変化を楽しみながら、山と水と人の関わりに触れることができるのは、新神戸駅から再度山へ向かうコースならではのこと。花崗岩をフィルターにした水は清い。さすがは六甲のおいしい水で知られる山域である。あ、麓にはうまい酒で知られる灘もあるな。

憩いという表現のぴったりな市ヶ原。散策の休憩、水遊びなどなど、みな思い思いに過ごす

 というわけで、コースの折り返し地点となる修法ヶ原池(しおがはらいけ)まで、何度も何度も水辺で足を止めることになるだろう。カメラが趣味だという人は一歩進んで二歩下がることになるから、時間配分に注意が必要だ。ゆるいハイキングになるかと思いきや、なんとも計画通りにいかない誘惑の多い低山。ある意味、ツンデレな山なのである。

神戸外国人墓地からほど近い修法ヶ原池は、紅葉の名所でもある
修法ヶ原池にて。アイスコーヒーとスコーンを求めてカフェでひと休み

 登山というよりは「自然散策」という表現が相応しい、整備の行き届いたハイキングコース。歩いているだけで抜群に気持ちよくなれるから、自宅の近くにあったら毎日のように通いたくなるなあと、ひとりごちる。

 ちょっと暑い初夏の頃、ここ修法ヶ原池で飲んだアイスコーヒーの味が忘れがたいほど美味しく、脳裏にはその情報がすり込まれていた。実はつい最近、このコースを再度歩いてきたのだけれど、メニューとして加わっていたクリームソーダの写真にすっかり目を奪われてしまい、飲むと決めていたはずのアイスコーヒーをあっさりと諦めたのだった。新幹線を下車して、わずか2時間後、ちょうどお昼くらいのことである。

 

■再度山を1日で満喫するためのおすすめルート


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<おすすめルート>
新神戸駅→布引の滝→布引貯水池→市ヶ原→蛇ヶ谷→修法ヶ原池→再度山→大龍寺→猩々池→諏訪山公園(ヴィーナスブリッジ)→県庁前駅
(所要時間の目安:3時間30分)