先日、アルプスや八ヶ岳の山々から雪の便りが届いた。東北の美しい紅葉でネットニュースやSNSが大いに賑わってから間もないというのに、標高2,000m以上の山の世界は、すでに本格的な冬を迎えている。とはいえ、もう少しだけ秋の山も味わいたいところではある。
秋山といえば、色とりどりの艶やかな紅葉もいいけれど、もうひとつのお楽しみとしてススキの群生も見逃せない。関東なら日光の戦場ヶ原や群馬の榛名湖、箱根の仙石原はよく知られた群生地で、例年10月半ばから11月にかけて見ごろを迎える。中でも、伊豆の細野高原と三筋山は、おびただしいススキの輝きと相模灘の真っ青な海とがいっぺんに眺められる最高の展望地だ。
■金色の野に降り立つべし! 思わず口ずさむ細野高原のススキの波間
伊豆半島の南東部に位置する細野高原は、稲取や河津をふもとに抱える高原地帯だ。その昔、噴火を繰り返していた天城山域の一端にあり、火山活動と浸食とによって形成された池塘が点在する、いわば高原の湿地である。
稜線に立ち並ぶ風車の数が、この一帯の風の強さを物語っている。山肌を覆うおびただしいススキの群生が、時おり吹きつける風に繰り返し繰り返し波打つ。その様子が本当にきれいで、あの中に埋もれたい! といわんばかりに、大の大人たちがこぞってススキの海に身を投じるのがおもしろい。
この絶景は地元の風物詩でもあり、毎年この季節になると「すすきイベント」が催される。駐車場から先は舗装された道が縫うように続いていて、軽装で歩くことができるところも人気の理由だろう。そのため、ハイカーより観光客の方が圧倒的に多い。