茨城県久慈郡大子町に位置する「生瀬富士(なませふじ)」は、標高406mという低山ながら、変化に富んだ登山道と開放的な山頂、麓の歴史や名所などとの組み合わせによって、登山愛好家から観光客まで幅広い層に人気を博している。特に日帰り登山の目的地として、その手軽さと充実度の高さが魅力だ。

 標高400m台の山というと、「物足りないのでは?」と感じる人もいるかもしれない。しかし生瀬富士には、標高以上の魅力が詰まっている。

 まず、山頂からは奥久慈の山々が見渡せる絶景が広がり、天気の良い日には那須連山や八溝山(やみぞさん)、遠く筑波山の姿も確認できるほど見晴らしが良い。さらに登山道は、歩きやすい道と岩場が交互に現れ変化に富んでいて、中上級者まで楽しめる。

 加えて、袋田の滝という全国的にも知名度の高い観光名所が徒歩圏内にあり、観光と登山をセットで楽しめる点も大きな魅力である。

 公共交通機関でもアクセス可能であるため、車を持たない登山者や観光客にも優しい山といえる。

■ 生瀬富士の登山ルート概要

 生瀬富士への代表的な登山ルートは、袋田の滝駐車場を起点とし、月居観音堂(つきおれかんのんどう)を経由して月居山を登り、生瀬富士へと至る縦走コースである。

 このルートは約5〜6kmほどで、標高差も少なく、所要時間はおよそ3時間程度が目安である。袋田の滝の滝見物から滝トンネルを抜け、第二観瀑台(かんばくだい)方面に進むと登山口への案内が見えてくる。

 月居観音堂までは比較的緩やかな道が続くが、そこから先はやや勾配のある登りと岩の露出が多い登山道になるため、必ずトレッキングシューズ着用で登りたい。

登山道入口の石碑