栃木県と福島県にまたがる活火山・那須岳とその一帯は、登山も下山後も楽しいこと間違いなしの贅沢な“遊べる山域”である。
というのも、東北自動車道からアプローチしやすい東麓の那須高原はリゾート開発が進んでおり、火山活動の賜物たる素晴らしい温泉に加えて、林間に佇む洒落たカフェやレストランが軒を連ねる。さらにJR東北本線・黒磯駅の周辺にまで足を延ばせば、ゲストハウスやアウトドアショップなどが集中していて、感度の高い旅人を刺激するのだ。
山に目を向けると、個人的には那須岳とその西麓に秘された名湯・三斗小屋温泉ははずせない。なかなか山深いため、寄り道はハイカーならではの特権となる。せっかくなら、山で寄り道、下山後も寄り道という、このうえない贅沢な山旅を楽しみたいところだ。
■那須岳の主峰「茶臼岳」は、火山の迫力と360度の大展望が魅力
那須岳とは、いくつかの山岳が連なる那須連山の一部のこと。3,000m級の山々に囲まれた日本アルプスとは異なり、山頂から望む波打つように立ち並んだ低山から関東平野にかけた果てしない眺めが魅力の2,000m前後の山々の集まり。その中でもドシンと風格ある山容の茶臼岳、反るように屹立した朝日岳、たおやかに三方へと尾根をのばす三本槍岳の三山。これらを総称して「那須岳」と呼ぶ。隣接する東北南部や上越の雪稜をも見渡すことができるのは、まさに関東北端に位置する山ならではの展望だといえる。
岩石のむき出す荒々しい山肌の主峰・茶臼岳は標高1,915m。現在も噴煙を上げる活火山であり、山頂の西側にある無間地獄ではゴウゴウと音を立てて噴出する白い煙を間近に見ることができる。その迫力と絶景からファンの多い山であり、とくに夏山シーズンは高所ゆえの涼しさが後押ししてか、登山客のみならず、ロープウェイを利用した手軽な観光登山を楽しむ人も目立つ。
山頂はもとより、登山道からして絶景の切れ目がない。とにかくどこでどのように風景を切り取っても絶景なので、ハイカーも観光客もついつい足を止めがち。あっちこっちにカメラを向けること間違いなしだから、所要時間は余裕をみておきたい。
とはいえ、茶臼岳から先は鎖で補助された岩場や爆風が名物の稜線が続く。登山経験と装備がなければ立ち入ることは難しいエリアだ。しかしながら、そこを越えて谷間に佇む三斗小屋の秘湯を目指せば、極上の温泉を楽しむことができる。健脚なら日帰りが可能だけれど、個人的には山小屋の雰囲気か、テント泊のどちらかを楽しむ1泊コースをおすすめしたい。