東京から日帰りハイクのためにやってきた神戸の山中で、お昼どきにクリームソーダを飲んでいるとは、なんて順調なんだ。屋外で飲むクリームソーダの美味しさに、修法ヶ原池(しおがはらいけ)の畔にすっかり根を生やしてしまったではないか。もうこうなったら先へと進まず、ここからバスで離脱することもできると、ヘタレな考えが頭をよぎる。まあ、運行している曜日と時間は要確認だけれど、登山の途中に公共交通で帰ることができるのは、このコースの良さともいえるだろう。
しかし、再度山(ふたたびさん)の山頂は、じつはすぐ目の前にある。標高470mの頂まで、わずか10分ほどだろうか。再度越と呼ばれる峠から脇に取り付くと、山頂に直登できる道があるので注意が必要だ。入口はやや不明瞭で急登だけれど、踏み跡はしっかりついている。とはいえ不安があるなら無理をせず、再度越から大龍寺まで下りてしまい、あらためて寺の裏から奥の院と山頂を目指すのがよいだろう。
山頂は展望がよく、港町神戸の情景がすぐ眼下にある。海と街と山の距離が極端に近いことに目を瞠る。見晴らしのよい日なら、大阪南部の山々まで正面に一望することができるのも魅力だ。関西の山に馴染みのない関東のハイカーなら、普段はなかなか目にすることのない大阪方面の山々と海の情景にきっと感動するだろう。
このあと、まさしく眼下に見えるあの街中を目指すことになる。山頂直下にある大龍寺にお詣りしたら、かの弘法大師が歩いたという「大師道」で下山する。