新緑の春から初夏にかけて、六甲山地は色彩がぐぐっと鮮やかになる。毎年のように訪れている大好きな山域だけれど、少し暑くなってくる時期がぼくの好みで、やや肌寒くなった錦繍の秋と並んでお気に入りの季節。
その理由は海の青さにある。暑くなってくると同時に、太陽のきつい陽射しによって、瀬戸内海が真っ青に照り映えるのだ。東北や関東の海では見ることのできないブルーに、ぼくの心はいつも躍る。
同じように海を望むご当地アルプスとして、<前編>では神奈川県の三浦アルプスをとりあげた。東京湾と相模湾という、異なるふたつの湾を結ぶ半島横断の旅。一方で、この須磨アルプスは、樹林あり岩稜あり展望ありの本格的な山岳縦走路を凝縮したようなトレイルが魅力。ルート上のどこからでも見える瀬戸内海は、絶大なる存在感だ。海を眺めながら低山を歩きたい人なら、間違いなく気に入るだろう。
■低山ながら見せ場が途切れない「須磨アルプス」
大都市・神戸の市街地を西から北にかけて覆っているのが六甲山地。JR新神戸駅で新幹線を下車すると、そのまま登山を始められる絶好の立地に、初めて訪れたときは衝撃を受けたものだった。
夜景が有名な摩耶山や、以前連載でも取り上げた空海ゆかりの再度山(ふたたびさん)などは、まさしく新神戸駅スタートで楽しめる。
そんな六甲の連なりの中で、須磨アルプスは新神戸駅から西寄りのJR山陽本線の塩屋駅から出発するのが楽しい。旗振山、鉄拐山、栂尾山、横尾山、馬の背、東山を経て、山陽電気鉄道本線の板宿駅をゴールにするプランは、初心者ハイカーでもチャレンジしやすい充実のコース。海辺にも近いし、このルートは本当におすすめしたい。
■塩屋駅から板宿駅を目指す、見どころ満載の縦走路
塩屋駅を出発し、住宅街を通り抜ける道すがら。ふと後ろを振り返ってみると、さっそく瀬戸内海の鮮やかなブルーが目に飛び込んでくる。眩しいけれど目にも心にも優しい青色に気分は高まるばかり。
最初のピーク・旗振山の茶屋には、神戸の海に見惚れるハイカーに混じって観光客も多いことに気がつくだろう。隣り合う鉢伏山は、ロープウェイとリフトを乗り継いで上がってくることができるためだ。