大いに盛り上がった大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が、先日フィナーレを迎えた。あのドラマをきっかけに神奈川県内の低山を歩き直したり、日本各地で出合う源平の伝承にアンテナを張ったりと、ぼくとしては日本再発見の2022年を楽しむことができたと感じている。
主役は北条義時だったけれど、物語の前半で絶大な存在感を示したのが源頼朝。その頼朝の信心深い一面は、ドラマの中でもずいぶん描かれていた。実際のところ、自身にとっての重要な場所である箱根権現と伊豆山権現を参拝する「二所詣」へ行ったり、さらに三島大社を加えたりと、鎌倉周辺の神仏のもとに足を運んだ記録は多い。
そんなわけで、今回は頼朝と所縁のある場所の中でも神奈川県を代表する2つの霊場を海と山から選んだ。折しも年末年始のタイミング。それぞれ今年の御礼と新年の祈願で訪れてみるのもよいだろう。
■【海の神】源頼朝や北条時政が籠った巨大な岩屋「江の島と江の島岩屋」
長い弓なりの海岸線に突如としてぽっかりと浮かぶ江の島は、いつでも橋で渡れる島だけに観光客で賑わっている印象がとても強い。しかしながら、奥へと足を踏み入れていくと、人の賑わいは次第に波の音へと変化していく。
島の裏側の雰囲気は、観光客向けのお店が並ぶ表側とはまるで別世界。切り立つ岩壁と海だけの、太古から変わらないであろう自然の営みが、ただただ広がっているのだ。広大な太平洋の向こうからやってくる荒くて白い波が、岩礁と共に心までも打ってきて、その様子を眺めているだけでうっかり時が過ぎてしまう。
岩壁に沿って続く遊歩道の先に、江の島岩屋がある。奥行が150mほどもあるこの巨大な海食洞の中で、江の島信仰が発祥した。それゆえ、ここには名の知れた数多の名僧が修行や祈願に訪れていて、奥州藤原氏との戦いを前にした頼朝も戦勝を祈ったと伝わる。
そんな岩屋に残るさまざまな言い伝えの中でも、北条義時の父・時政のエピソードがおもしろい。時政が子孫繁栄を祈ってこの岩屋に籠っていたところ弁財天が現れ、願いを叶えると約束して去った。そのあとに残されていたのが3つのウロコ。これが北条家の家紋「三つ鱗」の起こりである。
なにかと縁起の良さを感じさせる岩屋だけに、年末年始に訪れるに相応しい雰囲気。江の島を訪れるなら、ぜひともここまで足を延そう。