今年もハイペースで日本各地の低山を歩いている。初めて歩く山の割合が圧倒的に多いものの、これまでに何度も歩いてきた“マイホームマウンテン”や、過去に訪れたことのある山を歩き直すこともしばしばのこと。
なかでも、最近あらためて「いい山、いいコースだなあ」と再認識した低山が東西にある。いずれも都市近郊の山で、海がとても近く、駅をスタート&ゴール地点に設定することができる“ご当地アルプス”だ。放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の舞台となった山域でもある。
というわけで、関東からは三浦半島に広がる丘陵地帯「三浦アルプス」を前編で。関西からは、神戸のまちと瀬戸内海を間近に望む六甲山地の西端「須磨アルプス」を後編で、それぞれ取り上げたい。
■異なるふたつの湾を望む「三浦アルプス」
神奈川県の南東部に位置する三浦半島は、海と街と山がとても近い。最高地点は標高241mの大楠山で、その他にも人気の高い低山がひしめきあう広大な丘陵地である。東京や横浜、鎌倉といった都市部からアクセスしやすいわりに自然が豊かで、その反面、油断したハイカーがうっかり道迷いするほどに道は複雑にして山は深い。
地の野菜は味の良さで知られており、海に突き出した半島の先端はマグロの水揚げで全国に名を馳せる。「鎌倉殿の13人」に登場する三浦一族の本拠地でもあった土地なのだ。知名度はなかなか高いのではないだろうか。
そんな三浦半島の“ご当地アルプス”たる三浦アルプスは、なんといっても「異なる湾を眺める山歩き」が魅力のひとつ。東には東京湾と房総半島が間近に広がり、西には相模湾と伊豆半島、そして富士山を望むことができるのだから。
一度に二度おいしい地理的な特徴に興味のある人なら、歩いてみる価値はきっとある。