よく小学生が風景画を描くとき、川だからといって単純に水色の絵の具を使ったりする。そういう子に対して、「川は実際そんな色をしてないよ」などと指摘したもんだが、この川を知ってしまった今の僕は全力の土下座で陳謝するだろう。そう、ここは川本来の色は美しい水色だったってことを思い出させてくれる場所。前回に続き、「仁淀ブルー」と賞賛される神秘の世界の魅力を、周辺を旅した記録とともに振り返っていく。
■仁淀ブルーとのご対面!
水が透明すぎて、川底に己の影がくっきりと映る。その上を魚がすうっと泳いで行き、頭上には鳥のさえずり。真の清流を求め、全国をさすらい続けて10余年。ようやく辿り着いた桃源郷を前にした僕は、自分だけの贅沢な時間を骨の髄まで楽しんでいた。
しかし水量のない川なので、何度も上陸してはパックラフトを担いでガッツリと岩歩きタイム(ポーテージ)に突入する。まさに飴と鞭。素直にことが運ばないのが、また探検チックでナイスロマンなのである。
しかし苦労すればするほど、奇跡的な瞬間に巡り合った時の感動は凄まじいものがある。ひいひい言いながら岩場を越えていると、やがて深い谷に太陽の光が差し込み始めた。川面の反射がキラキラと踊りだし、少しずつ世界の色が変わっていく。その光のカーテンが足元に到達した時、ついに僕の目の前に「仁淀ブルー」が姿を現したのである。