富士山は登る山か見る山か……。そんな問いが、山仲間との間でときおり話題になる。

「登る山でしょ!」と即答する人に詳しく聞いてみると、記念に一度だけ登ったことがあるという人が圧倒的。なかには、山頂に鎮座する富士山本宮浅間神社の奥宮を目指して毎年のように登拝するという猛者もいた。さすがは日本を代表する山であり、日本を象徴する信仰の山である。

 一方で、それ以上に多いのが「富士山は眺める方が好き」という回答。まあ、あくまで自分の周囲の山好きという狭い範囲での話だけれど、実はぼく自身も富士は見る方が好きだったりする。

 特に富士山の周囲にぐるりと連なる標高1500m前後の山々は、あの美しい末広がりの山容を眺める最高のビュースポット。山上から“富士山を見下ろす”ような構図になるため、その分だけ富士山麓に広がる大自然までセットで俯瞰することができるのだ。これが鳥の目のようで、とても良い。

早朝の精進湖。すっきり晴れた朝には、初夏の樹林と夏の青空に富士山が映える

 湖と富士山、樹海と富士山、町と富士山、遠くの山岳を背景にした富士山、裾野が一番広く見える富士山、たなびく雲と富士山、太陽の光と影で立体的に見える富士山……。山の上でなければ目撃することのできない富士の多彩な姿が、本当に感動的である。

 気がつけば、あらゆる構図の富士山を求めて、東西南北を取り囲む山々はほとんど登ってしまった。

 そんな中で精進湖と山中湖にある“ふたつのパノラマ台”は、軽めのハイクで到達できるお気に入りの展望スポット。夏は苛酷な暑さで低山がつらくなる季節だけれど、気温の低い早朝や午後の陽が落ちる前を狙えば、ここは意外と楽しめる。

 ということで、富士山を東西から眺めるパノラマ台をダブルヘッダーで楽しんでみたい。