■まさか! 走行中のドアミラーにも……

信号で停車した車の屋根に止まったキセキレイ

 思えば、他の野鳥でも同じようなことがありました。

 旅行先の熊本県で信号待ちをしていたところ、前に止まった軽ワンボックスカーの屋根にキセキレイが止まったのです。すると、すぐさま隣の車の窓ガラスに突進! 「信号機のそばにライバルなんかいるはずがないでしょう」と言ってやりたい気持ちでいっぱいでしたが、キセキレイにはそんな思いは通じません。

いきなりキセキレイの攻撃を受けて焦りました
運転席側のドアミラーにもやってきました。私との距離は30cmほど! 警戒心よりも闘争心が勝るのでしょうか

 また、沖縄では、畑の中の道を鳥を探しながらゆっくり車で走っていると、なんとキセキレイが助手席側のドアミラーにいきなり飛び込んできました。沖縄ではキセキレイは冬鳥なので、もちろん繁殖期ではありません。慌てて車を停めたのですが、何度も激しくぶつかってきます。あまりにも繰り返すのでかわいそうになって車を走らせたのですが、びっくりしたことに追いかけてまでも攻撃をしてきました。これほどまでになわばり意識が強いのか、と驚かされました。

●【動画】 走行中のドアミラーを追いかけてくるシーン!

■冬でも縄張り意識の高い「小さな猛禽類」モズ

地面で真剣勝負の縄張り争いをするモズ。脚をいっぱいに伸ばし、相手の喉元につかみかかるほどの激しさです(撮影:えいさん)

 繁殖期以外に縄張りをもつ野鳥としてはモズも有名です。モズは、秋になると「キィキィキィ」という高鳴きを始めます。秋冬に形成する縄張りを宣言しているのです。縄張りに侵入したモズ同士の争いは激しく、時に取っ組み合いの喧嘩に発展します。自分の体よりも大きな野鳥を襲うほどの獰猛なモズが蹴りを入れたり鋭い嘴で噛みついたりするので、必要以上に互いを傷つけあってしまうのではないかと心配になってしまいます。しかも、この時期の縄張り争いはオスもメスも関係ない仁義なき戦い。春先にはオスがメスに甘い求愛をしていたのが嘘のような行動です。

 空気の冷たさに本格的な冬の到来を感じる頃となりましたが、縄張りを主張する野鳥たちの熱さは増すばかり。これからは、木々から葉も落ちて野鳥を観察しやすい季節になります。室内でヌクヌクしたい気持ちを押さえて、野鳥たちの冬の縄張りにお邪魔させてもらってはいかがでしょうか。