北アルプス北部「白馬乗鞍岳」周辺で、国の特別天然記念物に指定されている(ニホン)ライチョウの調査が行われました。

 絶滅危惧種「レッドリスト」の1B類となっているライチョウは、氷河時代の生き残りとして、高山帯の過酷な環境でひっそりと、けれどたくましく生きています。彼らの生息数は、気候変動や環境などの変化とも密接に関係しています。減少傾向にあるのか、それとも一定数を保っているのか、その判断材料の元の一つとなる現地調査が、地元小谷村の山案内人組合のメンバーを中心に行われています(調査日:2025年6月27日)。

■糞と砂浴び跡を巡る地味な作業

岩場に散らばるオスの「見張り糞」
抱卵で我慢していたメスの「抱卵糞」

 今回調査した場所は「栂池自然園」横の登山口から登山道を2時間ほど上がった白馬乗鞍岳の山頂部一帯でした。登山道を中心に、深いハイマツ帯や岩場、雪渓など道なき山の中を手分けして捜索していきます。

 個体を発見、観察することもありますが、調査の大半は痕跡を見つけることに注力しています。とくに糞。「見張り糞」や「抱卵糞」といった糞を探してGPSに落とし込む作業がメインです。

割れて転がっていたライチョウの卵。草陰にもう一つあります

 さらに「砂浴び」の跡も重要です。鳥たちにとってのシャワーの役割を果たしている砂浴びの跡を見つけるのも、ライチョウたちの行動を知るうえで重要なのです。地味な作業ですが、例年どおりの場所に痕跡を発見するとほっとしますが、巣から離れた場所で割れた卵を見つけたときは、無事に孵ったのか、それとも外敵に襲われてしまったのか、心配になってしまいました。

■現代のライチョウは登山道がお好き!?

けっしてのんびり寛いでいるわけではない。登山道から20mくらいの岩の上にいた見張り中のオス

 ライチョウの個体を見るなら、ズバリ! "登山道沿い"です。彼らはこの時期、登山道脇に多く見られる浅いハイマツ帯で、ガンコウランやアオノツガザクラなど高山植物を食べています。また、登山道自体が恰好の「砂浴び」の適地となっているようでした。さらにオコジョやキツネ、猛禽類などライチョウを狙う外敵たちが嫌う“人間”が通るというのも、理由のひとつになっているような印象です。

 今回も個体の多くは登山道から見える場所で観察できました。とくにこの時期、オスのライチョウは見張りをしているために岩の高いところに佇んでいることが多いので発見しやすいです。これは抱卵中や産卵に向けて食事に夢中になっているメスのため。もうすぐ、かわいいヒナたちを連れたメスの姿も見られるようになりそうです。