冬は多くの水鳥たちが渡ってきて、河川や湖沼が賑やかになります。中にはハクチョウが飛来する地域もあるでしょう。カモ類がたくさん集まってくるところもあると思います。そんな中、ひときわ目立つのがオシドリです。これが野生の鳥なのかと思うほどの華やかな羽をまとっています。また、「オシドリ夫婦」という言葉にもあるように、夫婦仲の良さを表す鳥としても有名です。そんなオシドリの生態をのぞいてみました。

■身近な水鳥 オシドリとは

鮮やかなオシドリのオスの姿。オレンジ色に突き出す一対の羽は、「銀杏羽(いちょうばね)」と言われ、メスへのアピールとなります
オスに比べて地味な色彩のメス

 オシドリは、主に東日本の山間部で繁殖しますが、冬には、積雪の少ない地域に移動するため、西日本を含めた全国の湖沼や河川で見られます。緑の多い都市公園でも観察できることがあります。

 オシドリの特徴といえば、その色彩と形です。この世にあるすべての色が取り入れられたのではないかと思うくらいの鮮やかな羽をもっています。そして、「銀杏羽(いちょうばね)」と言われる、銀杏の葉の形のようなオレンジ色の羽が体の後ろから上に向かって突き出しています。帆船の帆にも見えるような独特な形。他のカモ類には見られない特徴です。

 しかし、それはオスの話。メスは、オスとは全く違う地味な感じです。あえて言うなら、白いアイラインがあるくらいでしょうか。

■本当にオシドリ夫婦?

一見、イメージ通りの仲の良い夫婦に見えますが……

 仲の良い夫婦のことをオシドリ夫婦と言いますが、それは中国の故事「鴛鴦(えんおう)の契り」が由来のようです。「鴛」はオスのオシドリ、「鴦」はメスのオシドリを指します。中国の春秋時代、別々に作られてしまったある夫婦の墓から木が伸びて互いに絡み合い、そこにオシドリが巣を作って鳴き続けたことからその故事が生まれたそうです。

 しかし、実際のオシドリは、一生添い遂げるどころか、毎年違う相手とペアとなります。しかも、抱卵や子育てはメスのみで行う「ワンオペ育児」。こんな話を聞いたら、結婚式の祝辞で「オシドリ夫婦」なんて言葉を使えなくなりそうですね。