梅雨が近づき、蒸し暑い日が多くなりつつあります。そんな時は、きれいな渓流でのんびり涼みたいところです。渓流で耳を澄ますと「ルルルルル……」と心を洗われるような声が響いているのに気づきます。カジカガエルです。大きな吸盤をもち、川の速い流れの中でも、岩にしっかりとくっつくことができます。
東京都民の憩いの場である高尾山と、神奈川県民の水源である丹沢でカジカガエルとの出会いを楽しんできました。
■高尾山の玄関口を流れる案内川

年間260万人の登山客が訪れる高尾山。世界一の登山者数だそうです。ミシュランの三つ星もゲットしており、世界に誇る山となっています。しかし、玄関口となる京王高尾山口駅前に小さな清流が流れているのを知らない人も少なくありません。すぐ横を甲州街道である国道20号線が並走する川ですが、初夏から夏にかけてはカジカガエルの美しい声が響き渡ります。高尾山のリピーターである登山者の中には、下山後に親水護岸で足を休める方もいらっしゃいます。


多摩川水系の南浅川の支流となる案内川ですが、野鳥や昆虫の宝庫でもあります。この日も、黄色いお腹が美しいキセキレイや、ひらひらと華麗に舞うカワトンボを見ることができました。どちらも渓流には欠かせない生物の一種です。高尾山に登らなくても、その入口で豊かな自然に接することができる貴重な場所です。
■案内川の水質を証明するかのような生き物が


登山口近くの個人宅の奥に小さな池がありました。声をかけてのぞかせていただくと、なんとそこにはたくさんのオタマジャクシとアカハライモリがいるではありませんか! アカハライモリは、東京都の「レッドデータブック」で“絶滅危惧1B類”という、上から2番目の危険度に位置する非常に珍しい両生類です。多くの人でにぎわう場所で、このような生き物がひっそりと生き長らえているとは予想もしていませんでした。
お話を伺うと、池には高尾山から湧き出している水が流れ込んでいて枯れることがなく、アカハライモリもずっと前から住み着いているとのことでした。池には、アカガエルのオタマジャクシもたくさんいて、餌に困ることは全くなさそうな良好な環境でした。


そんな良質の水が流れ込む案内川ですから、環境指標生物として取り上げられることも少なくないカジカガエルが棲んでいることにも深く納得できます。
水遊びに来た若者が小さな石を投げて遊んでいました。この川のカジカガエルは、そんな日常を受け入れているのか、石の音が「ボッチャン」と弾ける中でも、元気に「ルルルル……」と鳴き続けています。
私が撮影するために近づいても、他の河川よりもずっと警戒心が弱いように感じられました。これも人気スポット高尾山のカジカガエルの特徴かもしれません。