猛暑も一段落し、登山やキャンプ、釣りとフィールドで過ごしやすい気候になってきた。ブヨやアブといったアウトドア活動の天敵とも言える虫たちも随分と減ってきた。だが、油断大敵! これから活発化する危険な昆虫がいる。それがスズメバチだ。

 実際、今年も9月に入り涼しさを感じるようになってから、山道を歩いていても渓流で釣りをしていても盛んに飛び回る姿を見かけることが多くなっている。被害に遭わないためにも、この時期のスズメバチについての知識や対処方法を簡単に紹介したい。

■秋はスズメバチの季節!?

 攻撃性が高く何度も刺せる毒針、死の危険があるアナフィラキシーショック、仲間を呼んでの集団攻撃……。スズメバチの全般的なイメージは恐ろしいものばかりだろう。

近くに巣があるのだろうか。林道脇の草むらで複数飛んでいた

 スズメバチ被害のピークは8月半ば〜10月の半ばだという。秋になるとその被害がどんどんと増えてくる。夏に個体が育って数が増えてくるうえ、餌が減少してくるせいで殺気立ち、一番攻撃性も強まる時期だ。

 僕自身、山と釣りにどっぷりハマって約30年。写真撮影やガイド、山仕事を含めると年間100日近く山中にいるが、過去に(スズメバチに)刺されたことは3回。その全てが夏の終わりから秋にかけてだった。それが多いのか少ないのか分からないが、所属する山の組合、猟師を含めた山仕事50年、60年以上のベテラン勢でも、クマの被害より(もちろん注意するべきだが)、実際はスズメバチで痛い経験をした人の方が圧倒的に多い。

■刺されないためにはどうする?

 スズメバチというのは総称で、大型のオオスズメバチや住宅地でもよく見かけるキイロスズメバチ、さらに絶滅危惧種になっているが危険なチャイロスズメバチなど様々な種類がいる。外見を大雑把に表現すると、身体がオレンジがかっていて身体が大きく、脚が黄色っぽいという特徴があるので、見かけたら速やかに離れよう。

 テリトリーに侵入者があると、まずは偵察で様子を見にやってくる。早めに存在に気付ければ引き返せば大丈夫だ。ハチが近くまで寄って来たら、刺激しないように静かにその場から離れること。

 ビックリして手で振り払ったりすると危険な存在だと認識されて攻撃モードに切り替わる。カチカチと警告音を鳴らして臨戦態勢に入る。身体の周りをホバリングされると、生きた心地がしない。冷静な判断は恐怖心もあって難しいが、ハチが飛んできた方向から離れるしかない。行動範囲から離れてしまって諦めてくれることを願うのみだ。

 よく言われるように黒色の服装は刺激を与えるし、香水や化粧品、柔軟剤などの甘い香りは彼らを引きつける。虫除けや蚊取り線香(森林香など)の強力なものを使用していても、ことスズメバチに関しては気休め程度にしかならない気がする。

木に同化するように巣を作っているチャイロスズメバチ。他のスズメバチの巣に寄生することも

 一番危険なのは、巣に気づかずに刺激してしまったケースだろう。一般的に認知されている巣は大型の球状で目立つが、これは完成形だ。完成前のものは歪で小さいし、木の虚(ウロ)や地面に巣を作る種類もいる。うっかり巣のそばを歩いたりしてしまい攻撃を受けることも。山道を歩くときは十分に周囲に注意することが大事だ。

 万が一に備えるなら、極力肌の露出を少なくし、厚手でゆとりのある服装で重ね着をしておけば多少の効果はあるかもしれないが、現実的には限界がある。