4月に入り、日ごとに暖かさが増すこの頃になると、毎年ソワソワしてくる。春の女神とも言われる「ギフチョウ」がその姿を現すからだ。関東地方ではほとんど見ることができなくなったギフチョウだが、比較的簡単に見られるスポット「石砂山(いしざれやま)」を訪れてみた。
■関東でのギフチョウの聖地「石砂山」
石砂山は、神奈川県の相模湖の南側、相模原市藤野町に位置する標高588mの低山である。そんな石砂山が一年で最もにぎわうのが、3月末から4月初旬にかけてだ。
彼らの目的は、春の女神とも称されるアゲハチョウ科の蝶「ギフチョウ」である。ギフチョウは、日本固有種で、四国や九州には生息しない。本州では、北は鳥海山から山口県まで広く分布しているが、近年とても少なくなっていて、今では関東では石砂山など神奈川県の一部でしか見ることができない。そのため、ギフチョウが現れる早春には、各地から多くのファンがやって来るというわけだ。
■いきなりギフチョウが現れた!
取材日の4月1日、午前中に所用を済ませ、登山口に着いたのは12時半頃。ギフチョウは、気温が上がってくるお昼前から活発に活動を始めるため、そんな時間にのこのこやって来ても、それほど問題はない。
ミツバツツジが咲き乱れる登山口前には、すでに20人を超えるカメラマンが恋人を待つかのような表情でスタンバイをしていた。すると、「あっ、来たッ!」と誰かが小さな声で叫んだ。ギフチョウがミツバツツジの花に蜜を吸いに来たのだ。周りの人たちが一斉にレンズを向けるのを見て、私も慌ててカメラを構えた。
ほんの数秒間で飛んで行ってしまったものの、なんとか写真に収めることができた。その独特な色彩と模様からは、「春の女神」にふさわしい高貴な雰囲気が感じられる。
まだ登山口に着いてもいないのにギフチョウを見ることができたので、もうここでずっと待ち続けようかという誘惑にかられたが、一応山頂まで歩を進めることにする。