梅雨前線が列島を覆い、蒸し暑い日々の到来を告げている。久しぶりのまとまった雨が降り、木々はより鮮やかに深い緑色を映して、窓から見る空の景色は夏の色だ。
例年この時期から咲き始めるニッコウキスゲが今年も咲き始めたようだ。夏の空を彩る入道雲と、どこまでも続くような花のトレイル組み合わせは、この時期ならではの景色だ。初夏のトレッキングにおすすめのトレイルを3つ紹介したい。
■雲の向こうを抜けると、そこは一面の花畑! 今年はニッコウキスゲの当たり年!? 「霧ヶ峰高原」
霧ヶ峰は長野県真ん中あたり、茅野市と諏訪市にまたがる「八ヶ岳中信高原国定公園」にある。標高1,925mの車山を中心とし、なだらかな草原と湿原、樹林帯のある丘陵地だ。年間298日は霧の中といわれるほど霧が多い。真夏でも冷涼な気候で、酷暑が続くと度々避暑に来てしまうよいところである。
今年はニッコウキスゲが当たり年と聞いて早々に訪れてみた。ピークは7月中旬になると予想されているが。6月の主役のレンゲツツジと早咲きのニッコウキスゲが仲睦まじく咲き誇る姿はとても美しく、夏の空色と白い雲に似合っている。
今回は、霧ヶ峰自然保護センターから歩き始め、車山肩~車山山頂~車山乗越~車山肩〜自然保護センターへ。4時間ほどのコースである。ニッコウキスゲの他にもコバイケイソウやアヤメ、ニシキウツギがトレイルを彩り、ホオアカやノビタキなどの野鳥や、シカなどの野生動物にも会うことができた。トレッキング後に霧ヶ峰自然保護センターに立ち寄れば、観察できた動植物について調べたり、霧ヶ峰の成り立ちや今後の課題など知ることができる。ぜひ立ち寄ってみてほしい。
車山山頂は、スキー場からリフトを使って簡単に昇ることもできる。ドライブやツーリング中にも気軽に立ち寄れる山になっている。混雑状況や災害による交通規制を調べて、ニッコウキスゲの当たり年と言われる霧ヶ峰高原へぜひ!
■あの天空のトレイルが、より身近になった! ワタスゲとニッコウキスゲ舞う「白木峰」
白木峰は、富山県と岐阜県の県境に位置し、標高は1,596m。半人工草原の霧ヶ峰高原と違い、日本海からの厳しい季節風が、“風衝帯”と呼ばれる草原のような丘陵帯を作っている。7月、ニッコウキスゲの時期は見渡す限りの黄色い花で埋め尽くされ、圧巻の景色を見ることができる。
以前は土砂災害の影響で、麓の「杉ヶ平キャンプ場」か、岐阜県側の「万波高原」から小白木峰経由で片道4時間の道のりだった。しかし、2024年5月末日から林道大谷線の通行が再開されて、8合目駐車場から1時間で、感動の稜線に立つことができるようになった。
久しぶりの白木峰は、早咲きのニッコウキスゲや浮島のワタスゲ、コバイケイソウなど多くの花が出迎えてくれた。木道は少々傷んでしまったところがあるが、相変わらずよく整備されたトレイルは気持ちよく歩ける。天空へ続くかのようなトレイルは健在で、日本海から時折吹き抜ける風は「いつまでもここは変わらないよ」と囁いているような気がする……。
8合目駐車場と避難小屋にトイレはあるが、施錠され使用不可の時がある。杉ヶ平キャンプ場のトイレは綺麗に整備され、冷たい飲み物も買える。リーズナブルな価格のテントサイトは、整備されササユリが咲き気持ちよさそうだ。麓からの登山の方は準備を万全に、特に飲料水は十分に持っていきたい。時間が短縮された分、下山後には富山の町を散策するのもいい。“おわら風の盆”で知られる八尾の町はとても雰囲気があるところだ。